本研究の最終目的は,発展途上の電子飛跡型半導体コンプトンカメラを実現させることである。研究代表者が研究開発を進めてきた「イベント駆動型SOIPIX」を用いることで,少数のガンマ線検出で到来方向を決定することが可能となり,カメラとしての性能が大きく飛躍する。本研究課題では,CPU組み込みFPGAによるオンボードデータ処理を実装することにより,課題であるリアルタイム性を躍進させる手法の研究開発を進める。3年目である最終年度は,下記の成果を得た。 1)パターン情報出力機能を強化した大面積イベント駆動型SOIPIXの開発:昨年度,小型素子にて機能実証した,チップ上でリアルタイムに検出パターン処理が可能な回路を搭載した大面積素子を開発した。これにより,イメージセンサレベルでデータ処理効率を最大限に高めることができた。また,開発した大面積素子は,これまで課題であったアナログ性能を大幅に改善することができた。具体的には,アナログ信号の劣化要因を解析し,問題点を設計へフィードバックした。2)コンプトン散乱による反跳電子の深層学習を用いた飛跡解析モデルの開発:シミュレーションデータを基に学習させることで,イベント駆動型SOIPIXに適したモデルの検討を進めることができた。3)開発した深層学習モデルをFPGAに組み込む手法検討:開発した深層学習モデルをFPGAに組み込み動作させるための手法研究が,本研究課題の目的であった。ツールを組み合わせることで実現可能であると結論づけ,実機を用いた実装検討を進めることができた。
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