研究課題/領域番号 |
19K14743
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
加賀谷 美佳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (10783467)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電子飛跡型コンプトンカメラ / SOIピクセル半導体検出器 / MeVガンマ線天文学 |
研究実績の概要 |
本研究では、暗黒物質探査や超新星爆発による元素合成メカニズムの解明など、sub-MeV~MeV ガンマ線観測に特化した電子飛跡型コンプトンカメラの開発を目的としている。SOIピクセル半導体検出器を利用することで、ラインガンマ線の検出に適した装置の開発が期待できる。令和元年度では、開発したプロトタイプ検出器を用いて、散乱角や回転角、深度方向の角度などを変え、様々な条件で実測試験を行った。また、計算機を用いたシミュレーションを行い、プロトタイプ検出器の飛跡の検出性能について評価した。511 keV のガンマ線の線源を用いた実測試験とシミュレーションで得られた電子飛跡の反跳方向の分布は、条件を変えた場合でも一致しており、実測でも電子の反跳方向をある程度分離できることが明らかになった。素子に射影された電子飛跡が150μm程度より長く検出できる条件(散乱角が45度~90度の大角度散乱)であれば、電子飛跡の反跳方向を推定できることが分かった。深さ方向においては、ピクセル半導体検出器が単層であるため、現状では飛跡のイメージから深さ方向を特定することが難しいということが明らかになり、小角度散乱および深さ方向については、今後新たな素子を開発する上での課題として洗い出すことができた。 また、上記の評価で用いたプロトタイプは吸収層にシンチレーション検出器を用いているが、コンプトンカメラの性能として評価するために、吸収層をCdTe半導体検出器に置き換える。令和元年度でCdTe半導体検出器の素子および読出しボードなどを購入した。まず、読み出しボードの動作確認のために、読出しボードのFPGAにロードするためのファームウェアの開発を現在行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、ピクセル半導体検出器の電子飛跡の検出能力について、様々な条件で実測試験およびシミュレーションによる評価を行うことができた。また、CdTe半導体検出器での測定に必要な物品を揃え、動作試験を進めることができているため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度では、引き続き、CdTe半導体検出器の動作試験として、読み出しボードのファームウェアの開発および、CdTe半導体検出器に接続するASICの開発を行う。まず、ファームウェアの開発および動作試験として、動作確認済みのシンチレーション検出器を接続して、ファームウェアが正しく動作していることを確認する。次に、CdTe半導体検出器の後段に取り付けるASICの開発をKEKの協力のもとに行う。これらを接続して、CdTe半導体検出器の単体での動作試験を行い、エネルギー分解能やノイズレベルなどの基礎性能を評価する。その後、これまでのプロトタイプ検出器の吸収層をシンチレーション検出器からCdTe半導体検出器へ置き換えて実測試験を行う。コンプトンカメラとして得られた同時計数のデータを用いてガンマ線の到来方向をコンプトン運動学および逆投影法を用いて再構成し、コンプトンカメラとしての性能(感度や角度分解能、角度指向性)を評価する。また、実測の情報をもとに、シミュレータを用いて衛星搭載用コンプトンカメラの設計およびシミュレーションによる性能の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に、SOIピクセル半導体検出器の共同での素子開発の機会が決まり、それ以降、開発の機会がいつになるか不明瞭であるため、素子の開発費を2020年度に計上した。
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