研究課題/領域番号 |
19K14744
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
山本 剛史 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 任期付研究員 (80784751)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハイパー核 |
研究実績の概要 |
A=4のハイパー原子核で最近発見されたハイパー原子核構造における荷電対称性の破れの効果をA=12及びその付近のハイパー原子核についてガンマ線精密分光実験から明らかにすることを目指し、本研究ではその実験手法の確立を目標に設定している。本研究で開発予定の新たな実験手法では、ハイパー原子核生成反応として(π-,K0)反応を新規導入して、このハイパー原子核生成同定装置と半導体Ge検出器を用いた高分解能の精密ガンマ線分光を組み合わせることで実現可能だと考えるが、本研究期間中にこれら手法に必要な装置の開発と炭素標的を用いた実験手法の試験を行う予定である。 H31年度は必要な開発要素のうち特に、ハイパー核生成反応から作られるK0中間子の崩壊後のπ中間子を検出するための飛程検出器のデザイン最適化を重点的に行った。この飛程検出器はGe検出器群の内部の限られたスペースに設置する必要があり、干渉を避ける検出器デザインを行うなど、複数の検出器を組み合わせた総合的な測定効率の最適化を行った。また、シミュレーションによりπ中間子入射に伴う飛程検出器の応答を調査し、その層構造(厚さ、層の数)の仮決定を行った。また、単層での飛程検出器の性能評価も行っている。 この層構造の決定には、π中間子が検出器内で原子核に吸収されることで放出される粒子の挙動が影響するが、現段階でのシミュレーションではこの挙動の再現が困難であるため、今後は中間子を試験機に照射しての試験を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度目標としていた研究開発のうち、シミュレーションを用いた飛程検出器の最適化は順調に進んでいる。しかし、飛程検出器の試験機の基本的な性能評価作業に遅れが出たことに加え、J-PARCのビーム利用時期がトラブルのために遅れたこともあり、中間子ビームを用いた飛程検出器試験機のテストのための準備に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
開発を継続している飛程検出器について、試験機の宇宙線も用いた性能評価を継続し、光量の最適化などの検出器の性能向上を図る。また、飛程検出器試験機にJ-PARCで供給されるπ中間子を照射しての試験から、π中間子吸収時の検出器応答について確認し、その結果から層構造デザインにフィードバックをかける。 さらに、複数の検出器を組み合わせた本研究の目指す実験セットアップについて、より詳細なシミュレーションや飛程検出器試験の結果を用いることで、本研究で新規導入する(π-,K0)反応に対する検出器群の反応同定能力(エネルギー分解能や粒子識別能力)について評価を行い、より現実的な実験セットアップ構築を目指す。
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