研究実績の概要 |
Ia型超新星の中でも、He shell の核燃焼で爆発を誘発されるタイプのものは(Double Detonation model)、その He shell 燃焼の際に大量の 44Ti を合成し、陽電子を供給していると考えられている。一方で、そのIa型超新星の44Ti からの崩壊ガンマ線の観測例は未だない。本研究では、その観測的証拠を掴むための観測機器の開発と観測研究を行なっている。 我々は、この44Ti崩壊γ線(68 keV, 78 keV)の観測精度の飛躍的向上のため、ニューハンプシャー大やNASAと協力し、γ線TESカロリメータと硬X線望遠鏡を組み合わせた気球実験計画を進めている。昨年度に引き続き、今年度も米国の気球計画にプロポーザルを提出したが、未採択となった。課題を解決しながら、再度提案書を準備する予定である。硬X線望遠鏡の開発に関しては、昨年度から多層膜研究をNASA/GSFCで開始していたものの、Covid-19 の影響で開発に遅れが出ている。 観測研究に関しては、Ia型超新星の残骸(ケプラーの超新星残骸)の膨張速度を XMM-Newton 衛星のグレーティング観測で測定し、その三次元構造に迫った(Kasuga. 2021, ApJ受理)。加えて、Ia型超新星残骸 3C 397 から Ti と Cr を検出し、爆発中心の密度の推定に成功した(Ohshiro et al. 2021, ApJL受理)。理論研究とも協力しながら、様々な爆発モデルを残骸まで発展することに成功した(Ferrand et al. 2021, ApJ)。また、44Ti と同時に作られる安定Ti (= 48Ti)を超新星残骸 Cassiopeia A から発見し、Nature 誌で発表した。
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