研究課題
理化学研究所の稀少RIリングを用いて行う質量精密測定に必要な等時性調整の手法について、現在の手法を発展させた新しい手法の確立を目指した。稀少RIリングは、宇宙の元素合成過程の1過程であるRプロセス解明のため、Rプロセス経路上核の質量精密測定を行う蓄積リングである。稀少RIリングが採用している等時性質量測定法では、リング内部を周回する粒子がどのような運動量を持っていても同じ周期で周回する(等時性)状態が高い精度で成り立つ必要がある。高精度の等時性場の達成のために、周回する粒子の周回周波数(周回周期の逆数)を測定する共鳴ショットキーピックアップを用いて等時性調整を行うことができる。リング内の真空度が低い場合は、周回粒子が残留物質と相互作用し運動量を失うことを利用して、リング内の等時性の達成度を知り、磁場を調整する。より中性子過剰核の測定には高い真空度が必要になるためこの手法は適用できない。そこで運動量を任意に変化可能なRF空洞と、現存の共鳴ショットキーピックアップを組み合わせた、新しい等時性調整の手法を確立し、稀少RIリングにおける質量測定の精度を保証することが本研究の目的である。当該年度は現存の共鳴ショットキーピックアップについての総括論文執筆を目指し種々の計算を行った。特にリング内のエミッタンスと周回粒子の周回周波数の変動についての計算に取り組んだ。研究期間全体を通じて、RF空洞と共鳴ショットキーピックアップを組み合わせた新しい等時性調整手法に関してはビーム実験には至らなかったものの、稀少RIリングにおける質量測定において得られた共鳴ショットキーピックアップによる等時性調整を実施したデータの解析により得た重要な知見は、高真空度でも適用可能な新しい等時性調整手法の確立に活用できるため、将来行う稀少RIリングにおけるより不安定な核の質量精密測定のために大きな進展をもたらす。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Physical Review Letters
巻: 128 ページ: -
10.1103/PhysRevLett.128.152701