研究課題
ミリ波・サブミリ波帯連続波撮像観測は、初期宇宙から現在に至る宇宙星形成史を統計的に理解するうえで、最も重要な観測手法である。測光赤方偏移を効率的に決定するためのサブミリ波帯多色撮像観測装置として、可視・近赤外線観測で一般的な、フィルターホイール方式を提案し、多色観測の原理実証を目指し、その要素技術の開発的研究を実施した。これまでに、高精度かつ安価なフレキシブルプリント基板(FPC)技術をベースにしてサブミリ波光学の電磁界シミュレーションによるフィルター透過率の計算手法を確立し、フィルターを多層化することによって広帯域かつ急峻なバンド特性を持つフィルターのデザイン手法を確立した(Uno et al .2020)。フィルターは既存のFPC技術を用いることで短納期、かつ安価に製作でき、透過特性の測定によって、電磁界シミュレーションと一致する性能を確認した。また、大型焦点面で必須となる熱収縮率の小さいシリコンアルミ合金でのホーンアンテナの試作を行い、その製作技術を確立した (Takekoshi et al. 2022)。今年度においては広帯域な検出器モジュール全体の原理実証を進めるべく、新たに製作した超伝導検出器を含む焦点面システム全体の光学試験の実施を目指した。まず、超伝導検出器のデータ読み出しに必須な読み出し装置の組み上げと性能評価を実施した。また、この読み出し装置を使った実際の超伝導検出器の多重読出しにも成功した。また、光学フィルター、ホーンアンテナ、検出器チップなどと組み合わせたモジュールも製作が完了した。今後、本研究で開発された要素技術やシステムを利用し、早期の科学観測を志向した次世代サブミリ波カメラの開発を加速させる。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Journal of Low Temperature Physics
巻: 209 ページ: 1143~1150
10.1007/s10909-022-02795-9