研究課題/領域番号 |
19K14756
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
飯島 陽久 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (90783952)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乱流 / 太陽 / 磁場 / 光球 / ダイナモ |
研究実績の概要 |
太陽・恒星におけるダイナモ機構に関して、熱対流に伴う乱流を平均化した平均場モデルに基づき、これまで数多くの研究が行われてきた。しかし、平均場モデルで最も重要な乱流輸送パラメータは定量化されず、観測と合うように調整されていた。本研究では、太陽ダイナモ過程の平均場モデルにおける乱流輸送パラメータを、太陽表面構造の正確なモデル化が可能な輻射磁気流体計算を用いて直接的に評価する。これにより、太陽ダイナモの平均場モデル研究をより定量的なものへとシフトさせ、太陽型星以外の恒星を含めた太陽・恒星ダイナモの統一的理解への貢献したい。 平成31年度は、輻射磁気流体計算を利用して鉛直軸に対する回転対称性がある設定で、乱流輸送係数を評価を実施した。太陽対流層上部から光球・彩層までを抜き取った局所的な計算ボックスを取り、フィードバックを無視出来る弱い水平磁場に対する熱対流の鉛直輸送効果を定量化した。初期結果であるが、乱流輸送係数の大きさが水平磁場の鉛直波数に依存しており、特に波長の長い磁場に対して対流層内部への閉じ込め効果が高いことが分かった。一方で、熱対流の圧縮性のために上向きの輸送が強く働いており、これが下向きの乱流輸送効果を打ち消していることも明らかになった。 また、当該年度は平均場近似による表面磁場のモデリングと観測との比較からのアプローチも実施した。平均場近似による大規模表面磁場のモデリングと観測結果との整合性から比較的弱い可能性が示唆されていた鉛直方向の乱流輸送係数であるが、我々の研究によって先行・後行黒点の非対称性という乱流と関連しない物理で観測結果との整合性を高めることが可能であることが示された。これにより、乱流輸送係数に対する観測的な制約はより弱まったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成31年度に予定していた乱流輸送係数の直接評価を実施出来たことに加え、太陽表面磁場の平均場的な輸送モデルを利用した乱流輸送係数の観測的制限に関わる査読論文を出版することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度に実施した乱流輸送係数の直接評価をブラッシュアップし、その物理解釈に関して議論を深めたのち、査読論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた解析用サーバーおよびハードディスクの購入が遅れているため。
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