研究成果の概要 |
宇宙線加速機構の理解は, 現代天文学の最重要課題のひとつである. 超新星残骸 (SNR) が, 宇宙線加速の場として注目されている. これまで申請者は, 星間物質とSNR衝撃波との衝突が, 宇宙線の加速に本質的な影響を与えていることを, 銀河系内のSNRについて明らかにしてきた. 本研究は, これをマゼラン雲やM33を含む近傍系外銀河のX線SNR30個余りに拡張することで検証例を増やし, 宇宙線電子加速機構の一般的描像の獲得を目的とする. ALMA/ASTE 電波望遠鏡により, これら近傍系外銀河でも, 衝撃波-星間雲相互作用が宇宙線加速に本質的な役割を担うことを世界で初めて明らかにした.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
宇宙線の起源やその加速機構の解明は, 天文学100年来の大きな謎であり, 学術的意義が高い. なぜなら宇宙線はその高いエネルギー密度から星間雲内部に深く浸透し, 星間物質の加熱や化学進化を促すため, 銀河進化を考える上で本質的であるからだ. 本研究は,宇宙線加速源として有望視される系外近傍銀河の超新星残骸 (SNR) に着目し, 宇宙線からの高エネルギー放射と周辺環境との関係を明らかにした. 特に, 小マゼラン雲や M33 銀河における当該研究は前例がなく学術的意義は高い. また本研究は, 宇宙線の普遍的な発生機構を示したものであり, 人類の宇宙に対する理解を促進した点で社会的意義も大きい.
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