研究実績の概要 |
本研究では理論と観測の両面から大質量星形成過程の解明に取り組んでいる。Zhang研究員, 谷口助教等との国際協力によりALMA観測から複数の成果を得られた。超コンパクトHII領域G24.78+0.08A1中心部の高分解能ALMAデータ解析を進め、光電離フィードバックが発生するほど大質量に成長した原始星周囲における円盤構造, 化学状態や連星形成過程について報告した。また、単独星のように大質量星が誕生する様子(G28.20-0.05)や、複雑な少数星団形成の様子(G35.20-0.74N)を調べることで、大質量星形成における分裂過程の多様性が明らかになってきた。大小マゼラン雲のALMA観測も進め、初期宇宙のような低金属量環境における大質量星形成についても観測的制限を得られつつある。Bally教授等と共に、APO望遠鏡などによる可視赤外観測も開始し、多波長による大質量星形成フィードバック過程解明に取り組んでいる。双極HII領域Sh2-106のHST長期観測から爆発的なアウトフローが発見され、3500年前に中心星付近において原始星同士の衝突などのダイナミカルな現象が発生していた可能性を示した。合わせて詳細な物理過程を含む理論モデルの構築も進めている。山室氏, 奥住准教授と共同で、円盤構造とダスト成長・破壊過程を整合的に組み込んだ理論モデルを構築し、地球型惑星形成理論において重要となる岩石ダスト破壊限界速度へ制限をつけることに成功した。松木場研究員等との共同研究で、様々な金属量における原始星円盤の輻射流体力学計算を行い、重力不安定による円盤分裂過程の金属量依存性を定量的に明らかにした。これらの理論研究から得られた新しい知見をもとに、新たな観測提言も行っている。
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