研究実績の概要 |
本研究では理論と観測の両面から大質量星形成過程の解明に取り組んでいる。下西准教授, 徳田特任助教, Zhang研究員, Ginsburg助教等とのALMA望遠鏡を用いた国際共同研究では、様々な成果が得られている。大小マゼラン雲における大質量原始星サーベイ観測が進行中で、特に今年度は小マゼラン雲におけるアウトフロー、ホットコアの初検出を報告することができた。初期宇宙に似た低金属量における大質量星形成の物理・化学過程の普遍性と多様性に新たな知見が得られつつある。また、大質量原始星高分解能観測のALMAアーカイブデータの詳細解析を進め、塩化ナトリウムNaCl輝線が付随する10個の原始星円盤を同定した。本成果は大質量原始星円盤における化学特性が、良く知られたホットコア化学とは大きく異なり、より高温・高密度の新しい化学特性を持つことを示している。合わせて、大質量原始星の理論研究も進めている。山室氏, 奥住准教授との共同研究から、ダスト成長・破壊を考慮した大質量原始星円盤の理論モデルの構築に成功した。本モデルと、観測から推定される大質量原始星円盤中のダストサイズと組み合わせることで、岩石ダストの付着力を求めることが可能となる。松木場研究員との共同研究では、輻射流体力学シミュレーションを用いた円盤自己重力安定性についての詳細な研究を行い、低金属量環境では重力不安よる激しい円盤分裂が発生することが明らかになった。Jan Staff研究員等との共同研究では、MHDシミュレーションを用いた大質量原始星アウトフローフィードバックの長時間進化を追うことに成功した。得られた結果は、我々のALMA観測とも整合性の高いもので、星形成効率は~50%であることが示された。これらの理論をもとにした新たな観測提案も行い、今後は宇宙史を通じた星-惑星形成の理解にも大きな貢献ができると考えている。
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