研究実績の概要 |
最終年度、理論面からは、ダスト成長・破壊を考慮した大質量原始星円盤のモデル構築, MHDシミュレーションによる原始星アウトフローの力学特性と観測特性予測, 大質量原始星団形成におけるHii領域の観測特性予測などに関する論文が4本出版された。特に、降着率が非常に高い大質量原始星円盤においてもダストは数百μm程度まで成長することが明らかとなった意義は大きい。このダスト成長は観測特性に重大な影響を与えうるため、山室氏と協力のうえ、円盤モデルから連続波観測予測を可能とする新しい解析解を導出し、それを利用することで大質量原始星円盤GGD27-M1のALMA観測からダストサイズや降着率などを見積もることに成功した。現在、当該研究については2本の投稿論文を準備中である。観測研究としては、銀河系および大小マゼラン雲の大質量原始星に対するALMA高分解能観測など共著論文が6本出版されており、初期宇宙のような低金属量環境における大質量原始星の力学・化学過程の解明にも重要な成果が挙げられている。 研究期間を通じ、強烈なフィードバックのなかで大質量星がどのように誕生するのか、その様相が明らかになってきた。光電離領域が形成された後も降着円盤を通じたガス降着が継続するような大質量原始星を初めて発見し、その成果をもとに新たなサーベイ観測も進行している。また、フィードバック克服の鍵となる降着円盤の物理・化学特性の解明にも大きく貢献してきた。特に大質量原始星円盤におけるダスト合体成長や難揮発性物質蒸発という過程は、岩石惑星形成との関連性も高いことが新たに理解され、「熱い円盤」の研究は今後の星・惑星研究の重要なテーマのひとつになっていくと期待される。さらに低金属量環境における星形成について、理論だけでなく観測的研究を開始できたことは、今後の宇宙史を通じた星駅性の普遍性・多様性を解明する重要な一歩である。
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