研究課題/領域番号 |
19K14761
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
笹田 真人 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (10725352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジェット / 偏光 / 可視光 / 電波 |
研究実績の概要 |
本研究目的は銀河の中心にある核から光速に近い速度で噴出するプラズマ流であるジェットにおける電波から可視光帯域を中心とした、多波長帯域での偏光を比較することで、ジェットの物理を理解することである。本研究を行うために、まずは研究環境の構築を行った。計算機を購入し、必要となるソフトウェアのインストールを行い、構築した計算機を用いて、電波干渉計観測のアーカイブデータを用いたスパースモデリングによる画像再構成を試みた。画像の再構成にあたり、パラメータの最適化を行う必要がある。そこで交差検定法を用いて、パラメータサーベイを行い最適パラメータによる画像復元を行った。これによりジェットの従来より微細な構造を暴き出すことに成功した。この解析を複数の観測データに対して実施することで、ジェットの時間的変化を調べた。その結果、ジェットは単純な直線運動によって宇宙空間を進行しているのではなく、進行方向と垂直な方向にもゆれながら進行していることがわかった。この移動の様子はジェット内に螺旋磁場が存在し、ジェットのプラズマ流が磁場に沿って移動する場合にうまく説明できる可能性があることを示唆している。この研究は広島大学の学部3年生と共同して行った。この研究は電波観測・解析の基礎から統計的手法の応用まで駆使して行われる。そのため学部3年生でありながら、専門的な知識や応用を実践することができ、学生の教育においても良いテーマであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算用のサーバーマシンに計算環境をインストールし、実際にブレーザーのアーカイブデータの解析を行うことができている。電波画像の再構成を行うためのパラメータチューニングも試み、実際にジェットの変化を追うことができている。 またイベント・ホライズン・テレスコープのデータ解析においても活用され、解析結果がまもなくまとまる予定である。 可視光観測においても、順調に行われている。特にγ線帯域において増光をしたブレーザー S5 1803+78 という天体について可視光・近赤外偏光観測を実施することに成功している。また、解析においても、可視光データの自動解析システムの構築を継続している。偏光データは単純な撮像データにくらべ複雑であり、複雑な画像データの中から可視光の点源の同定を行う必要がある。現在はそのシステムを開発中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は電波VLBI解析の偏光の抽出を行う。スパースモデリングを用いた電波偏光マップの抽出はまだ未開拓な分野であり、この手法を確立することができれば、過去のデータから超高空間分解された偏光マップを得ることが可能となる。さらに、電波画像にある電波源位置やフラックスなどの情報の抽出も行う。ここでは、様々なパラメータで推定された画像から電波源位置やフラックスを見積もり、それらの平均や分散、分布を見ることで、それらの値の誤差を推定する。 可視光解析については、自動で解析解析を行うシステムの完成を目指す。具体的には画像内での天体の同定を行うために World Coordinate System の画像データのヘッダーへの書き込みを自動で行えるようにする。これにより見積もられた画像内の天体のフラックスの中からターゲット天体のフラックスの抽出を自動的に行う。これによって、かなた望遠鏡によって過去の取得された未解析の観測データを自動で解析し、電波データと比較することで、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス関連に伴い、出張予定であった研究会が急遽中止となった。研究会の時期が3月と年度末であり、その他物品購入などもできなかったため、次年度使用額が生じる結果となった。
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