本研究は中心が非常に明るい活動銀河の中心核からほぼ光速で噴出するプラズマ流(ジェット)における粒子加速機構の理解を目的に、その粒子加速場所をジェット内で特定しブラックホールからの位置を推定することである。 粒子加速場所を特定するために、本研究では可視光と電波で同時に明るくなる、または偏光が等しい場所を調べる。これは電波を放射する電子に比べ、可視光を放射する電子の寿命の方が短いため、可視光を放射する電子の場所を特定することができれば、その領域の近傍にある粒子加速領域を特定することが可能であるためである。 昨年度までに電波干渉計で観測されたデータに対して、スパースモデリングを用いて超解像画像の復元を行なった。最終年度ではこの復元された画像群から動画を作成し、中心核から噴出するプラズマの塊の時間的変化を調べた。その結果プラズマの塊はまっすぐに移動するわけではなく、曲がりながら進行することがわかった。これに対して単純な螺旋軌道を仮定し運動をシミュレーションした結果、観測されたプラズマの塊の運動をうまく説明できることを明らかにした。この結果を日本天文学会で発表するとともに天文学会が主催する記者発表でも公表することができた。 また可視光偏光観測データを自動で解析するシステムを構築し、デバックを行なった。それに加えて、無偏光および強偏光の光が検出される星を観測し、そのデータを自動解析システムによって解析することで、得られた偏光データがどれくらいの精度であるかを評価した。それによると、偏光の系統誤差は0.2%以下であることがわかり、実用に耐えうる解析システムであることを確認した。そして、この解析システムを用いて過去に取得されていたジェット天体の偏光データを解析し、ジェット天体の可視光での偏光の振る舞いと電波ジェットの系統的特徴を調べた。
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