研究課題/領域番号 |
19K14765
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐野 圭 金沢大学, 理工研究域, 研究協力員 (70802908)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 宇宙背景放射 / 黄道光 / 光赤外線天文学 / 金属鏡 / 反射光学系 / 深宇宙探査機 / 惑星間塵 / 光学設計 |
研究実績の概要 |
可視光から近赤外線で観測される宇宙背景放射には、初代星や原始ブラックホールからの放射が含まれるためそれら未知天体を研究するための重要な観測量である。地球付近の宇宙空間では、太陽光の惑星間塵による散乱成分である黄道光の輝度が大きいため、高い精度で宇宙背景放射を検出することは困難である。そこで本研究では、黄道光の寄与が十分に小さくなる深宇宙から宇宙背景放射を観測するために、将来の外惑星探査機に搭載する光赤外線観測装置の試作機を開発する。2019年度は望遠鏡光学系の設計を中心に行った。まず、既存の惑星間塵の空間分布モデルを用いて、深宇宙における黄道光輝度を見積もった。その結果、太陽から約5天文単位離れた木星軌道付近の宇宙空間では黄道光輝度が十分小さくなり、口径100mm程度の望遠鏡を用いて約50nmの波長分解能で宇宙背景放射を分光して検出可能であることを示した。その結果を踏まえ、有効口径が150mm×90mmで自由曲面の3枚の金属鏡から成る反射光学系を設計した。等方的な放射である宇宙背景放射の検出に特化するため、この光学系は約16度×8度の広い視野を持ち、宇宙空間での放射冷却時にも光学的アラインメントを保つために反射光学系を採用した。各金属鏡は背面をハニカム状にくり抜くことで軽量化を図った。さらに、光学系の公差解析を行い、その精度を満たして鏡を配置するための支持構造を設計した。次年度には、これらの金属鏡と支持構造を製作し、光学的な性能評価を実施する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における主要課題は望遠鏡および光学系の試作機の製作であったが、本年度中に光学設計を完了することができたため、次年度初頭に光学系試作機の製作を行うことが可能である。そのため、次年度には製作した光学系を用いて、常温における光学性能評価など種々の試験を実施することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、製作する望遠鏡試作機の常温における結像性能評価を実施する。特に全視野でエンサークルドエナジーを測定し、設計値と比較する。 並行して、設計した光学系に対して有限要素法による振動シミュレーションを行い、各鏡の共振周波数と伝達関数を推定する。光学試験後に振動試験を行い、シミュレーションと比較し、各鏡の共振倍率を導出する。 深宇宙では、宇宙背景放射の前景光として、黄道光よりも銀河系内の星の積算光が支配的になると予想される。そこで、光学系の結像性能を考慮して視野内で星を足し合わせた擬似マップを作成し、星の積算光を見積もる。その結果に基づき、観測時における宇宙背景放射の検出感度を導出する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究で2019年度に設計した望遠鏡および支持構造(約240万円)を、翌年度分の助成金と合わせて製作する計画であるため次年度使用額が生じた。製品は2020年6月までに納品予定であり、納品後にそれを用いて種々の試験を実施する予定である。
|