研究課題
可視光から赤外線において観測される宇宙背景放射は、宇宙の星形成史を解明するために重要な観測量である。地球近傍では、黄道光が宇宙背景放射に比べて数倍明るいため、測定の不定性が大きい。より高確度での観測のためには、黄道光が微弱になる深宇宙空間からの観測が必要である。そこで本研究では、将来の深宇宙探査機に搭載することを想定した宇宙背景放射観測用望遠鏡の試作を行った。まず、3枚の自由曲面から成る有効口径90mm×50mmの反射光学系を設計した。拡散放射である宇宙背景放射を検出するために、16度×8度の広視野をカバーする光学系とした。同材料の反射光学系にすることで、冷却時に発生する熱ひずみの低減もねらっている。その後、アルミニウム合金の切削加工により、各鏡を製作した。また、振動耐性を向上させるため、鏡の背面にハニカム状の穴をくり抜き、大幅な軽量化を実現した。鏡の支持構造には位置決めピンを採用することにより、光学的なアライメント精度が得られる構造とした。その後、望遠鏡の結像性能を評価するために、常温において平行光線を入射し、各視野における焦点位置付近の結像状態を撮影した。大部分の視野では所定の結像性能が得られたが、一部の視野では像サイズが予想に比べて2倍程度大きいことが判明した。鏡の表面を観察すると、線状の切削痕が複数存在しており、それによって結像性能が悪化した可能性がある。今後、結像性能を改善するために、研磨による追加工を実施する計画である。
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Proceedings Volume 11443, Space Telescopes and Instrumentation 2020: Optical, Infrared, and Millimeter Wave
巻: 11443 ページ: 114436B
10.1117/12.2559169