研究課題
当該年度は、昨年度から引き続き、シアン化水素分子などの観測により検出される高密度分子ガスに着目し、本研究のサンプルと、それらと同じくらい活発に星を形成しているが衝突を起こしていない銀河におけるガスの性質の比較を進めた。本研究のサンプルでは、星の材料となる高密度ガスの存在比は高くないが、ある一定量のガスからどれくらいの星が形成されているかを示すパラメータ(星形成効率)の値が高いことがわかっている。一方、衝突を起こしていない銀河では、星形成効率は高くないが、高密度ガスの存在比が高いことがわかった。この結果より、銀河同士の衝突や合体が星の形成モードを変化させ、合体後の星形成の性質にも影響を与え続けている可能性が示唆された。さらに空間分解した高密度分子ガスの性質を調査するために、アルマ望遠鏡に高解像度、かつ、高感度のシアン化水素分子の追観測を提案したが、採択には至らなかった。内容を見直し、再度観測提案を行いたいと考えている。これまでの解析から得られた結果を論文にまとめて発表した。また、アルマ望遠鏡の異なる3つのアレイで取得したデータを足し合わせて作成した電波画像を用いて、低温・低密度の分子ガスの分布を三次元モデルフィティングし、サンプルに付随するガス円盤の性質を調査した。初年度に行った調査では分子ガス円盤の大きさや分子ガスの量を測定するにとどまっていたが、理論モデルを利用することで新たな性質がわかってきた。一般的に、銀河衝突・合体によって重力ポテンシャルが著しく乱れるため、ガス円盤は不安定な状態になると予想されている。しかし、本研究のサンプルの中に、ガスの速度分散に対する回転速度の比が1より十分に大きい値を示す天体があることを見つけた。この値は、安定したガス円盤をもつ円盤銀河等で測定される値に似ており、これまでの描像と異なる結果が得られた。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
The Astrophysical Journal Supplement Series
巻: 257 ページ: 57-76
10.3847/1538-4365/ac257a