研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、巨大ブラックホール周辺の「磁場」という最も基本的な物理量を理論・観測 を連携して決定することにある。 そのために、降着円盤理論・ 電波観測・X線観測を連携し、巨大ブラックホールに付随するコロナからのシンクロトロン放射を捉えることで、数十シュバルツシルト半径の範囲における「磁場」を世界で初めて測ることを目指している。我々は ALMA 望遠鏡の サイクル 3 およびサイクル 4 の観測データ用いて、近傍の活動銀河核 ( IC 4329A と NGC 985) の観測を行い、予測どおりのコロナ由来のシンクロトロン放射成分を捉えた。これにより、活動銀河核コロナは40 シュバルツシルト半径程度に広がり、また磁場強度は10ガウス程度であることを初めて捉えた (Inoue & Doi 2018, ApJ, 869, 114)。 この観測を通して、我々は活動銀河核コロナに存在する比熱的な高エネルギー粒子の存在も掴んだ。コロナ形成の理解において、これら非熱的粒子の生成過程は重要である可能性がある。そこで、活動銀河核コロナにおける粒子加速の理論モデルを構築することで、これら高エネルギー粒子が衝撃波加速によって作られた可能性を示し、コロナの加熱源の可能性としても衝撃波加熱を提示した。さらに、近年 IceCube Collaboration によって報告されている TeV 高エネルギーニュートリノの起源として、活動銀河核のコロナが重要な役割を果たしている可能性も示した (Inoue, Khangulyan, Inoue, & Doi 2019, ApJ, 880, 40)。しかしながら、高エネルギー陽子の総量には不定性があるのも事実である。しかし、この点に関しては、今後のX線観測による検証によって、この不定性の範囲を狭めることができることもわかった。
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