研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、巨大ブラックホール周辺の「磁場」という最も基本的な物理量を理論・観測 を連携して決定することにある。 そのために、降着円盤理論・ 電波観測・X線観測を連携し、巨大ブラックホールに付随するコロナからのシンクロトロン放射を捉えることで、数十シュバルツシルト半径の範囲における「磁場」を世界で初めて測ることを目指している。 これまでの成果において、我々は ALMA 望遠鏡を用いて、近傍の活動銀河核からコロナ由来のシンクロトロン放射成分を捉え、コロナが40 シュバルツシルト半径程度に広がり、また磁場強度は10ガウス程度であることを初めて明らかにしている (Inoue & Doi 2018, ApJ, 869, 114)。さらに、活動銀河核コロナに存在する高エネルギー粒子の加速起源も明らかにし、近年 IceCube Collaboration によって報告されている TeV 高エネルギーニュートリノの起源として、活動銀河核のコロナが重要な役割を果たしている可能性も示した (Inoue, Khangulyan, Inoue, & Doi 2019, ApJ, 880, 40)。 我々が電波観測に基づき、コロナからのニュートリノ放射の可能性を明らかにした翌年の2020年にIceCubeによって近傍セイファート銀河NGC1068からのニュートリノ放射が発見されている。その起源解明は宇宙ニュートリノ背景放射起源解明に直結するため、大きな話題となっている。ALMA 望遠鏡のアーカイブデータと我々の理論モデルを組み合わせることで、我々は世界に先駆けて、NGC 1068からのニュートリノがコロナ起源であることを示すことができた (Inoue, Khangulyan, & Doi 2020, ApJL, 891, 33)。
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