星形成領域における赤外円偏光の観測は、可視光観測では吸収が大きすぎる高密度領域において、直線偏光だけでは得られない磁場やダストの性質に関する情報を与えるだけでなく、生命のホモキラリティの議論の上でも重要となる研究課題である。本研究では、研究代表者がこれまでに行ってきた赤外円偏光観測の大きな拡張として、(A)星形成領域に加え、惑星形成領域における赤外円偏光観測と、(B)アミノ酸ホモキラリティ実験を国際協力により行う。そして、宇宙起源の生命のホモキラリティの統合的描像を提言する。さらに、円盤の構造・ダスト・磁場の物理情報を得ることによって、円盤中のダストの成長や磁場の役割を解明する。 本研究の観測面における新規点は赤外円偏光観測を高解像度化する事である。これにより惑星系形成領域である原始惑星系円盤の観測を可能にする。円盤における円偏光場を世界で初めて赤外線波長においてマッピングし、円盤における円偏光の大小、惑星形成領域の微細な空間構造・磁場構造・ダストについての情報を得ることができる。 今年度は、昨年度に引き続き、すばる望遠鏡に搭載したIRCS装置を用いた円偏光試験観測を継続し、その解析を進めた。その結果、NGC6334星形成領域において、初めて高解像度円偏光撮像に成功した。その偏光度やパターンはIRSF望遠鏡における低解像の既知の円偏光データとも合致しており、データの信頼性は問題ないことを確認した。現在、宇宙起源の生命のホモキラリティの統合的描像も含めた論文化を進めている。また、シリーズ現代の天文学のアストロバイオロジーにおける偏光観測に関する執筆も行った。さらに、サブミリ波を含む多波長の偏光観測による星形成領域の磁場構造およびダストに関する査読論文を多数出版した。
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