研究課題/領域番号 |
19K14776
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 恵 東北大学, 理学研究科, 助教 (50725455)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素質コンドライト / 非晶質ケイ酸塩 / 熱変成 / その場観察 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、隕石など太陽系始原物質中に含まれる非晶質ケイ酸塩の加熱による変化の詳細を実験的に明らかにすることである。近年の研究から、初期太陽系内に普遍的に存在し、天体の主要な固体原材料となったことが分かってきており、その加熱による進化過程を明らかにすることは、太陽系の固体物質進化過程を解明するうえで重要である。 今年度は、昨年度uXCTおよび透過型電子顕微鏡による観察・分析を行った非晶質ケイ酸塩を含む未加熱の始原的隕石(Acfer094隕石、MIL090657隕石、NWA1232隕石)について、得られた成果を論文にまとめるとともに(投稿中1, 作成中2)、それらの隕石から非晶質ケイ酸塩の微小試料を取り出し、高温その場TEM観察を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルス流行の影響で、学外でのその場TEM観察は困難となったため、後に予定していた、やや熱変成の進んだ天然隕石の観察・分析を先に進めた。未加熱の隕石は、マトリクスに(含水)非晶質ケイ酸塩を多く含んでいたが、弱い加熱を受けた隕石のマトリクスは、大部分ナノサイズのオリビン粒子からなり、その粒子間にFe(水)酸化物のナノ粒子を含んでいた。また、マトリクスは隕石の熱変成度によって異なる化学組成の特徴を示した。これら未加熱隕石と加熱隕石の構成物、化学組成の相違は、加熱による二次的な変化もしくはもとの原材料の違いを反映していると考えられる。今後は、これら天然未加熱・加熱隕石の観察結果と、高温その場TEM観察の結果を比較することで、非晶質ケイ酸塩を含む太陽系始原物質の多様性とその加熱による変化の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未加熱・加熱隕石中の非晶質ケイ酸塩の微細組織、化学組成の特徴が得られてきている。これらは、今後の加熱実験試料との比較材料となる重要な情報であり、研究は進んでいるといえる。一方で、新型コロナウィルス流行の影響で、学外での高温その場TEM観察は進んでおらず、課題全体としての進行状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、未加熱・加熱隕石の観察結果をまとめるとともに、隕石非晶質ケイ酸塩の高温その場TEM観察実験を進める。今年度、既にTEM用加熱チップは購入済みであり、集束イオンビーム加工装置を使った加熱用試料のテスト加工も行っている。新型コロナウィルスの流行状況を注視しつつ、学外での高温その場TEM観察を進め、加熱に伴う非晶質ケイ酸塩の微細組織や化学組成の変化を追跡する。その場観察の結果と天然隕石の観察結果を比較することで、非晶質ケイ酸塩を含む太陽系始原物質の多様性とその加熱による変化の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス流行の影響により、今年度は学外でのその場TEM観察実験が実施できなかったため、それに掛る予算(旅費・消耗品代・機器使用料)が未使用となり、次年度使用額が生じている。また、学内の機器利用費に関して、大学独自の若手研究者支援制度による割引を受けたため、未使用の機器利用費が生じ、次年度使用額となっている。学外でのその場TEM観察実験は、次年度に当初より回数を増やして実施し、予定していた全実験を行う予定であり、研究計画の実施におおきな支障はないと考えている。
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