研究課題
2019年度は、私がこれまでに開発してきた年代分析装置を改良し、分析対象と分析機能の拡張を行った。具体的には、第一に複数コアバンドル式の光ファイバを導入して分光システムの改良を行い、分光計で検出されるプラズマ由来の光量を従来の2倍程度まで向上させた。第二に、レーザーによって岩石から抽出される希ガスの濃度を計測することを目的に、深度合成機能付きの顕微鏡を用いた三次元測定用システムを構築した。これにより、レーザー痕の体積を計測する機能を年代計測装置に追加することができた。第三に、これまでに行なってきたアルゴンの定量にとどまらず、ヘリウムやネオンの計測を可能にするため、希ガス前処理手法の改良を行った。これらの希ガスのブランクレベルを定量したのち、ユークライト隕石にパルスレーザーを照射し、希ガスを抽出して分析を行った。ヘリウムおよびネオンの同位体は量が少ないことから、1000回以上のレーザー照射が必要にはなるものの、これまでカリウム・アルゴン年代を計測するために構築してきた装置に、隕石の宇宙線照射年代計測機能を追加することができた。上述した装置の改良と並行して、カリウムをはじめとする主要元素の定量性能を高めるため、元素分析アルゴリズムを開発した。具体的には、複数の標準試料に対してレーザーを照射して発光スペクトルのライブラリを作成し、未知試料のスペクトルを多変量解析によって解析することで、主要8元素を10%よりも良い精度で計測できる目処を得た。
2: おおむね順調に進展している
2019年度は、元素分析アルゴリズムや三次元計測用システムの構築など、分析装置の汎用性を高める改良を行った。多少のマシンタイムの競合はあったものの、岩石に含まれる低濃度のカリウムの測定準備は概ね整ったと考えている。
2020年度には、従来単レンズで実現してきたレーザースポット径(400 μm)を縮小し、100 μmまで絞れる光学系を組むことで、高K濃度のマトリックス部分を直接サンプリングする技術開発を行う。そのための照射光学系と観察光学系の構築を急ぎ、カリウムの検量モデルと検出限界を得るところまでは年内に進める。その後火星隕石からのAr抽出実験を行い、照射条件の最適化とArピーク強度の確認を行う予備実験を年明けには実施し、火星隕石のアイソクロン計測のための準備を行う。
海外出張の経費として計上していた分が、学会自体の中止により余ったため。2020年度に海外出張が可能になった場合に使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件)
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