研究課題/領域番号 |
19K14778
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長 勇一郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00737687)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 年代計測 / 火星隕石 / カリウム・アルゴン年代 |
研究実績の概要 |
本研究では、月・火星探査において岩石のカリウム・アルゴン年代を現地で計測することを目指し、一連の原理実証実験を行っている。21年度には火星隕石のカリウム・アルゴン年代を測定する実験を行った。具体的には、まずNWA1068、Zagami、NWA817の三つの火星隕石に対して、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ)分析を実施した。これにより個々の鉱物相を同定し、各相の大きさや形状、そこに含まれるカリウムの濃度を記録した。この結果を用いることで、レーザー発光分光法(LIBS)計測によるカリウム濃度推定の妥当性やデータ解釈ができる。 次にこれらの隕石を真空容器に入れてパルスレーザを照射し、カリウム・アルゴン年代を計測した。予備的な結果によると、4スポットのデータから作成した内部アイソクロン年代は726±132 Maと計算された。これは、すでに報告されているNWA1068のK-Ar年代610 Maと誤差の範囲で一致しており、本手法によるアイソクロン年代計測の成立性を強く示唆する結果であった。また、アイソクロンの切片として得られた値2.71±14.9E-07 cm3STP/gは, 先行研究において報告されている過剰アルゴン(1.32E-06 cm3STP/g, Bogard et al. 2009)と誤差の範囲で一致する。今までの測定方法では放射崩壊由来のArとトラップされたArの区別することが不可能であったが、今回の測定ではトラップされたArを検出できた可能性がある。このことは測定された年代の精度向上に寄与する。以上のことから、本研究で開発するレーザーアイソクロン法が火星の岩石についても適用できることを強く示唆する結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザ照射実験の過程で波長266 nmの紫外レーザー光を透過する真空窓の交換が必要となったが、コロナを遠因として当該窓材が世界的に品薄となっており、調達に時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
異なる年代を持つ隕石試料の計測数を増やして、達成できる年代測定精度を年代値の関数として得る。その結果を論文として発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国内・国外ともに学会出張がなくなったため。真空ラインの修繕と光学実験用の消耗品代として活用するほか、論文の出版費用として使用する。
|