研究課題/領域番号 |
19K14779
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金川 和弘 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60720787)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 巨大ガス惑星 / 原始惑星系円盤 / 円盤-惑星相互作用 |
研究実績の概要 |
原始惑星系円盤中の固体微粒子(ダスト)の進化は惑星形成において本質的かつ重要である。ダストはガスとの摩擦によって角運動量を失う。同時にガスはダストが失った角運動量を得る。このダストがガスに与える角運動量(反作用)は従来研究では無視されてきたが、申請者らの最近の研究 (Kanagawa+2017 ApJ 844) でこの反作用によってガス円盤進化が大きく変わる可能性が明らかになった。ダストからガスへの反作用を考慮した円盤進化を考えることで、惑星形成論の長年の問題であった所謂「惑星落下問題」を解決できる可能性がある。また、惑星は円盤にギャップと呼ばれるガスの空隙を作る。この空隙の外縁でダストが集積し円環構造を作る。この円環においてもダストからの反作用は無視できない。 本年度はガス・ダストを含めた2流体シミュレーションを行い、ダスト反作用の巨大惑星移動への影響を調べた。その結果、ダスト反作用によって惑星が作る密度ギャップの外側のガス密度が減少し、結果その場所から惑星が受けるトルクが減少することが分かった。結果、惑星の円盤内側への移動は大幅に減速する。また、木星質量程度の惑星の場合、惑星は外側に動きうることが分かった。この効果は上述の惑星落下問題を解決しうるものである。この結果は国際学術雑誌 The Astrophysical Journal Lettersに掲載されている。 また、円盤ガスギャップと惑星が観測された場合、ギャップ中心と惑星位置のずれから惑星移動速度を見積もる理論モデルを構築した。このモデルを観測結果に用いることで、数十万年にわたる現象のため直接観測が不可能と思われていた惑星移動の観測的証拠を得られるだけでなく直接移動速度を観測結果から測定することができる。この結果も国際学術雑誌 The Astrophysical Journalに掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はダスト反作用の巨大惑星の移動に及ぼす影響を調べ、ダスト反作用が惑星の内側移動を大幅に減速させ、さらに十分に惑星質量が大きい場合には惑星が円盤外側に動くことが分かった。この結果は未解決問題の惑星落下問題を解決しうる画期的なものである。 さらに、円盤観測結果から実際に惑星がどれくらいの速さで落下しているのかを見積もることができるモデルを構築した。 このように惑星移動理論の再検討は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果でも示されているが円盤内のダスト進化は惑星軌道進化にも大きな影響を及ぼす。次年度以降は円盤内のダスト進化を調べる予定である。また、近年盛んに行われている原始惑星系円盤の直接撮像観測の結果から惑星軌道進化や質量増加の痕跡を読み取れる可能性がある。今後は観測結果との比較も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
為替変動により当初予定から残額が発生した。 残額は2020年度に使用する。
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