研究課題/領域番号 |
19K14779
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
金川 和弘 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 研究員 (60720787)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 巨大ガス惑星 / 原始惑星系円盤 / 円盤-惑星相互作用 |
研究実績の概要 |
惑星は原始惑星系円盤で生まれ,周囲のガスとの重力相互作用によって軌道角運動量を失い円盤内側に移動する.惑星移動は10万年から100万年という長いタイムスケールで起こるため,その観測的検証は不可能であると思われてきた.しかし,本研究による原始惑星系円盤のガスおよびダスト2流体シミュレーションによって惑星移動とそれにともなう円盤ガス・ダスト構造の変化を計算すると,ガスの乱流粘性が十分小さい場合,惑星周辺にできるダストリングが惑星移動に追随せず置き去りにされることが分かった.今後,形成中の惑星がダストリングよりも内側で見つかった場合,惑星移動の観測的証拠となり得る.また,本研究によるとダストリングの位置は惑星の形成位置と関連しているはずであり,観測的に惑星形成の初期条件を制限することも期待される. また,現在の惑星形成論では惑星形成の初期段階ではペブルと呼ばれるcmサイズのダストの降着により成長し,十分に大きなサイズに成長すると周囲の円盤ガスの捕獲を開始し巨大惑星になると考えられている.上記の惑星形成シナリオを考慮し,原始惑星円盤で観測されるギャップ構造からより精密に惑星質量を見積もる方法を提案し,ALMAで観測された55のギャップ構造に適用し惑星質量の見積もりを行った.これらの結果はそれぞれ,国際査読論文誌に掲載されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で,惑星移動のフィードバックを考慮して原始惑星系円盤のガス・ダストの進化を計算し,惑星移動を観測的に制限する可能性を示した.また,観測から得られたギャップ構造から惑星質量を見積もる新たな方法を提案した.この方法で見積もった惑星質量をもとに軌道計算を行い,最終的にどのような惑星系が形成可能かを計算し,結果をまとめたものを国際学術雑誌に投稿している. このように前年の遅れを取り戻し,ほぼ計画通り研究を遂行することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は新型コロナウイルス感染症の影響で多くの研究会が延期または中止になったため,予定していた本研究の成果発表が十分にできなかった.研究期間を延長した次年度にはその分の成果発表を行っていく予定である.また,本研究で提案したモデルは惑星が円盤外側のダストリングよりもかなり内側に存在する可能性を示唆している.それを検証するためには,実際に観測された円盤で惑星がどこに存在するのかを特定する必要がある.惑星位置の特定は現在観測されているダストの連続放射の観測だけでは困難であるが,近年ALMAによってなされている分子輝線観測結果と組み合わせることによって惑星位置を制限することが可能である.今後は分子輝線データから惑星位置を特定する研究を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延によって研究会参加を見合わせたため,そのための旅費および参加費分の予算が未使用となった.また,同様の理由で研究打ち合わせも行えなかったため,その予算が未使用となった.次年度の予算使用計画としては,研究会参加のため費用および,観測結果から惑星位置を特定する研究に使用する計算資源(PC, ハードディスクおよびその周辺機器)の購入に充てる予定である.
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