惑星は原始惑星系円盤で生まれ,周囲のガスとの重力相互作用によって軌道角運動量を失い円盤内側に移動する.惑星移動は10万年から100万年という長いタイムスケールで起こるため,その観測的検証は不可能であると思われてきた.しかし,本研究による原始惑星系円盤のガスおよびダスト2流体シミュレーションによって惑星移動とそれにともなう円盤ガス・ダスト構造の変化を計算すると,ガスの乱流粘性が十分小さい場合,惑星周辺にできるダストリングが惑星移動に追随せず置き去りにされることが分かった.今後,形成中の惑星がダストリングよりも内側で見つかった場合,惑星移動の観測的証拠となり得る. 上記の本研究で提案したモデルは惑星が円盤外側のダストリングよりもかなり内側に存在する可能性を示唆している.それを検証するためには,実際に観測された円盤で惑星がどこに存在するのかを特定する必要がある.惑星位置の特定は現在観測されているダストの連続放射の観測だけでは困難であるが,近年ALMAによってなされている分子輝線観測結果と組み合わせることによって惑星位置を制限することが可能である.本年度は3次元流体シミュレーションによる軌道傾斜角を持つ惑星がつくる分子輝線観測で現れる観測的特徴を調査し,その観測可能性を議論した.この結果は国際学術雑誌に投稿中である.
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