研究課題
本研究では、岩石惑星の表層環境を特徴づける水などの揮発性物質獲得プロセスの解明を目的に、微惑星および原始惑星を起源とする分化隕石の放射年代測定と安定同位体分析を実施した。2019年度には、英国オープン大学の研究グループに協力いただき、本研究課題で対象とする隕石試料の選定、岩石鉱物記載、および予察的な安定同位体分析を行った。併せて、様々な隕石に含まれるジルコンおよびリン酸塩鉱物の放射年代(ウランー鉛年代測定)を、東京大学所有の高解像度二次イオン質量分析計ナノシムスを用いた局所分析にて調査した。2020年度には、当初計画していた英国オープン大学での酸素・水素安定同位体の追加分析がCOVID-19に伴う制限で実施できなくなったが、代わりに隕石の種類を増やして放射年代測定のデータベースを充実させることができた。さらに2021年度には追加試料の年代測定を実施した。本補助事業期間を通した研究により、ベスタをはじめとする小惑星帯の岩石天体は、約45億年前ー41.5億年前までに多数回の天体衝突を経験し、その後は主要な衝突イベントを経験していないことが明らかとなった。これは従来の天体衝突のピークとして想定されてきた年代値(約39億年前)を数億年遡るものである。本研究成果から、岩石天体への水などの物質供給は、惑星の集積過程から形成直後までの比較的早い段階で完了していたことが示唆される。
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