昨年度までに大型計算機(Oakforest-PACS)を利用して実施した「駿河湾を対象とした高解像度数値シミュレーション」に関する追加実験およびその追加解析を実施した。その結果、昨年度までに得られた「駿河湾においては日周期(K1分潮)の内部擾乱が地形性ロスビー波として卓越すること」、「地形性ロスビー波により海底近傍で強化された流れが駿河湾内の小さな凹凸地形と相互作用し準定常内部風下波およびそれに伴う強い混合を励起すること」などの知見が様々なモデルパラメータに依存しないことを確認した。また検潮所の潮位データとの比較から数値モデルの妥当性を確認した。これら一連の研究成果をまとめ査読付き国際誌で発表した。 また、昨年度11月に駿河湾中央部で実施した船舶観測から得られた、投下式深海乱流計VMP-X、RINKOプロファイラーおよびXCTDのデータを解析した結果、駿河湾の深海1000m以深で非常に強い鉛直混合が現実に発生していることが示され、これまでの数値シミュレーション結果を補強する観測事実が得られた。この研究成果は一件の国際会議で発表予定である(要旨受理済み)。 さらに、海洋中で発生する有効拡散の実態を調べるため、深海の理想的な状況を模した LES 実験を実施し、得られた密度場からそのポテンシャルエネルギーの時間変化を説明するのに必要な拡散係数(有効拡散)を求めた。その結果、見積もられた有効拡散はLESにより内生的に算出される拡散係数(乱流直接観測から得られる拡散に相当)よりも1オーダー近く大きくなることが示された。この結果は、乱流直接観測から得られる拡散係数とOGCMなどの数値モデルに代入すべき拡散係数が異なり得ることを示唆している。
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