研究課題/領域番号 |
19K14799
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
末木 健太 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (50802980)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 竜巻を伴う台風 / 環境場 / 台風強度 / 温帯低気圧化 / Warm bubble実験 |
研究実績の概要 |
昨年度開催された「竜巻シンポジウム-藤田哲也博士生誕100年を記念して-」での講演に向けてまとめた資料に基づき、台風に伴う竜巻に関する先行研究のレビュー、日本で発生した台風に伴う竜巻の環境場の特徴、竜巻を発生させた台風の構造的特徴、竜巻の発生に適した台風構造が生じる要因などについて、海洋出版が発行する専門誌「月刊海洋」の記事としてまとめた:(a)1991年から2013年に日本で発生した台風に伴う竜巻の発生位置は、台風の北東象限に集中している(日米の先行研究と整合的)。(b)台風に伴う竜巻の多くは太平洋岸の沿岸部で発生している。(c)竜巻を発生させる台風はそうでない台風に比べ、ストームに相対的な環境場のヘリシティ(SREH)やエントレインメントを考慮した対流有効位置エネルギー(E-CAPE)が大きい。(d)台風のSREHが大きくなる要因として、台風強度が強いこと、総観スケールでの鉛直シアが大きいことが挙げられる。(e)E-CAPEが大きくなる要因として、対流圏下層から中層までの気温の鉛直傾度が大きいことが挙げられる。本記事は、月刊海洋5月増刊号(号外63号「竜巻シンポジウム-藤田哲也博士生誕100年を記念して-」)として出版される予定である。また、温帯低気圧化する台風環境下も想定した様々な環境場を大気の鉛直プロファイルに関するパラメータスイープで表現する大規模なWarm bubble実験について、総降水量や地表面渦度、最大風速の環境場依存性の観点から投稿論文としてまとめるため、データ解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
竜巻の発生環境場との関連で進めているWarm bubbleの大規模なパラメータスイープ実験について、目標としていた論文投稿には至らなかった。様々な環境場中で発生する積乱雲について、下層渦度や最大風速などの環境場依存性の解析を進めているが、全19200通りの環境場による実験結果を系統的に解釈することにやや苦労している。2013年台風18号のシミュレーション研究についても、論文としてまとめる作業がやや遅れている。コロナの影響は引き続き大きく、関連する国際学会(Conf. on Severe Local Storms)などは昨年度に続き延期となるなど、国際的な研究交流は低調であった。
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今後の研究の推進方策 |
Warm bubbleの大規模なパラメータスイープ実験については、下層渦度や最大風速などの環境場依存性、SREHやE-CAPEとの相関についてまとめ、投稿論文としてまとめる。竜巻を多数発生させた2013年台風18号のシミュレーションについては、メソ渦を有する積乱雲が多数発生している領域・期間に対して、さらに高解像度のシミュレーションを領域ネスティングの手法により実施し、台風の温帯低気圧化に伴う回転性積乱雲の形成過程を明らかにし、投稿論文としてまとめる。また、理想的なWarm bubble実験の結果と、現実事例のシミュレーションの結果との関連について、台風の温帯低気圧化に伴う積乱雲の環境場が、Warm bubble実験のパラメータスイープのどの環境場に相当するのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会が再度延期となり、旅費の支出が無くなった。また、論文投稿が遅れている。次年度は最終年度であり、解析結果を論文としてまとめ、学術雑誌に投稿するため、英文校正等も含め経費が必要となる。学会の開催については引き続き流動的であるが、徐々に正常に戻りつつあるため、必要に応じて旅費を支出する予定である。また、本課題の成果を将来の研究にも活用するため、シミュレーションで出力された膨大なデータを手元に保管する必要がある。このための電子記憶媒体(HDD等)を購入予定である。
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