研究実績の概要 |
本研究は、2週間~1ヶ月程度の時間スケールを持つ熱帯季節内振動現象 (e.g., マッデン・ジュリアン振動; MJO)について、高解像度数値モデルによる成層圏準二年周期振動 (QBO)の精緻な再現を通じた予測可能性の延伸の可能性を探ることを目的としている。使用する高解像度非静力学大気モデル (NICAM)は世界に先駆けてMJOの約一か月先までの予測に成功した実績を持つが、その一方で熱帯季節内振動現象の予測スキルの初期位相依存性等の精緻な統計的検証は為されてこなかった。 研究初年度である2019年度は、開発する成層圏解像版NICAMの比較対象となる通常版NICAMによる夏季熱帯季節内振動 (BSISO)の予測性能評価のための数値実験と統計的解析を行った。2020年度はこれをさらに発展させ、予測実験データとして、初年度に行った2007年から2012年の8月の各日を初期値とする実験に加え、新たに2000-2006年、2013-2014年の8月の各日を初期値とする実験を追加した。これにより統計的により有意なシグナルを抽出することが可能になり、解析結果をまとめた論文は国際誌である日本気象学会の気象集誌に2021年8月に公開された (Shibuya et al., 2021) 最終年度は成層圏高解像度実験の実施に向けた具体的な数値実験設定を考察した。例えば、初期値の振幅が特に大きい事例については予測スコアが30日を超えると思われるため、本研究の30日間の実験ではNICAMのポテンシャルを過小評価している。正しい比較を行うためには、実験期間を例えば45日間程度まで延長して実験を行う必要があると考えられる。
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