研究課題/領域番号 |
19K14808
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
篠崎 彩子 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80570506)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 沈み込み帯 / 窒素 / 変成岩ダイヤモンド / 堆積物有機物 / 高温高圧実験 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究実績の概要 |
窒素は大気の主要な組成であり、地球表層から地球内部のマントル、核に至るまで様々な環境に存在し、その存在状態も多彩である。窒素は地球の進化に大きく影響する重要な元素でありながら全地球規模で循環に関しては未解明な点が数多く残されている。 沈み込むスラブは、地球表層から地球深部へと物質が供給される唯一の場所であり、全地球規模での地租循環を考えるうえで特に重要な領域である。本課題では、スラブの環境を模擬した高温高圧実験により沈み込むスラブにおける窒素の挙動を明らかにすることを目的とした。特にスラブにおける窒素の重要なリザーバーであり、地球表層物質に起源をもつ可能性が指摘される変成岩ダイヤモンドに着目する。変成岩ダイヤモンドの窒素の供給源の候補のひとつである堆積物有機物を対象に、スラブの高温高圧条件下での化学反応の詳細とそれに伴う窒素含有量、存在状態の変化を明らかにする。 本課題では外熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験を行い、高温高圧下その場X線回折測定と顕微ラマン散乱分光、顕微赤外分光から、沈み込むスラブにおける堆積物有機物を構成するいくつかの代表的な有機物を対象として、結晶構造の変化や化学反を調べた。さらに、外熱式ピストンシリンダーを用いた高温高圧実験と、回収試料の質量分析等から、複雑な化学反応生成物の詳細を明らかにすることを目的とした。得られた結果を基に堆積物有機物の化学組成や分子構造に温度、圧力が与える影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き外熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験を行った。室温高圧下、高温高圧下におけるその場粉末X線回折実験、中性子回折実験、ラマン分光などから複数の有機物の高圧下での構造変化と化学反応を評価し、有機物からのC-O-H流体およびC-O-H-N流体の生成条件やその温度、圧力、共存鉱物の影響を調べた。 外熱式ピストンシリンダーを用いた高温高圧実験を行い、堆積物有機物の重要な構成要素の炭化水素から無定形炭素(ダイヤモンドの類縁物質)が生成する温度圧力条件やその生成メカニズムの詳細を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
さらに有機元素分析などを用いた試料の分析を進め、高温高圧下における炭素化合物の生成メカニズムをより詳細に検討する。これまで得られた成果については解析を進め、現在学会発表および国際誌への投稿準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学外の装置を利用した実験のスケジュールがずれ込んだため、次年度使用額が生じた。次年度はその追試のための費用と成果を国際誌に投稿、発表するための費用として、使用する計画である。
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