窒素は大気の主要な組成であり、地球表層から地球内部のマントル、核に至るまで様々な場所で存在し、その存在状態も多種多様である。窒素は地球の進化に大きく影響する重要な元素でありながら全地球規模で循環に関しては未解明な点が数多く残されている。 沈み込むスラブは、地球表層から地球深部へと物質が供給される唯一の場所であり、全地球規模での地租循環を考えるうえで特に重要な領域である。本課題では、スラブの環境を模擬した高温高圧実験により沈み込むスラブにおける窒素の挙動を明らかにすることを目的とした。特にスラブにおける窒素の重要なリザーバーであり、地球表層物質に起源をもつ可能性が指摘される変成岩ダイヤモンドに着目し、変成岩ダイヤモンドの窒素の供給源の候補のひとつと考えられる堆積物有機物を対象に、スラブの高温高圧条件下での化学反応の詳細とそれに伴う窒素の含有量、存在状態の変化を明らかにする。 本課題では沈み込むスラブにおける堆積物有機物を構成するいくつかの代表的な有機物を対象として、外熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験を行い、高温高圧下その場X線回折測定と顕微ラマン散乱分光、顕微赤外分光から、結晶構造の変化や化学反を調べた。さらに、外熱式ピストンシリンダーを用いた高温高圧実験と、回収試料の質量分析、ラマン分光分析、XPS等を用いた分析を行い反応メカニズムの詳細を調べた。得られた結果を基に堆積物有機物の化学組成や分子構造に温度、圧力が与える影響を評価した。
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