研究課題/領域番号 |
19K14811
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
悪原 岳 東京大学, 地震研究所, 助教 (30802954)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レシーバ関数 / 表面波 / 海底地震計 |
研究実績の概要 |
巨大地震断層面の物性(とりわけ、間隙流体圧)を拘束するために、高解像度なS波速度構造を求めることは重要である。しかしながら、従来の人工震源を用いた構造解析では、深部(5-10 km)のS波速度を調べることは困難であった。本研究課題では、稠密海底地震観測網で記録された自然地震波形の解析によって、この目標到達を目指す。2020年度に稠密海底地震計アレイを熊野灘に設置した。 今年度は昨年度から引き続き、既存の海底ケーブル式地震観測網(DONET)で記録された地震波形データ用いて、予察的な解析を行った。高周波帯域でレシーバ関数波形を計算し、S波速度構造をインバージョン解析によって求めることで、プレートとともに沈み込む厚さ1 km程度の堆積物のS波速度を求めることに成功した。沈み込む堆積物内は低いS波速度を示し、間隙流体圧が高くなっていると考えられる。この高間隙流体圧がスロー地震(ゆっくりとした断層すべり)の発生に貢献していると考えられる。本研究内容は、国際誌(Geophysical Research Letters)に掲載された。 また、レシーバ関数波形だけでなく、表面波の情報を用いたインバージョン解析の準備を進めている。独立した2つのデータを合わせることで、推定されるS波速度構造の解像度が向上すると期待される。このようなインバージョン手法は広く用いられるようになったが、海底地震計への適用例はこれまでにない。そこで、海底地震計に適用できるように同手法を拡張した。開発したコンピュータプログラムは、オープンソフトウェアとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レシーバ関数のインバージョン解析により、当初目的としていた、断層面近傍のS波構造を推定できることが明らかとなった。また、今年度はこの結果を論文として出版できた。当初の計画にはなかった表面波の利用も準備が進められており、コンピュータプログラムの開発も順調である。来年度に取得される観測データへの適用が待たれる。
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今後の研究の推進方策 |
熊野灘に設置した海底地震計アレイを回収し、データ解析を進める。具体的には、表面波とレシーバ関数のジョイントインバージョン解析を行い、地震断層面のS波速度構造を求める。また、DONETの解析結果と併せて、断層面内のS波速度構造の不均質性を調べる。その結果から、断層面の特性(水理学的特徴など)を考察する。
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