地震が解放した応力の大きさは応力降下量と呼ばれ,震源の特性を表す震源パラメタの一つとして知られている.断層帯で発生する地震の震源パラメタは地殻の応力状態を反映しているのではないかと期待されてきたが,その大きな推定誤差ゆえこれまでの研究では明瞭な断層や大地震との関係性は観察されていない.発生頻度の高い小規模な地震の震源特性の推定精度を向上させることで,将来的な地殻内のモニタリングや地震発生物理の理解につながる可能性がある.昨年度までに,これまで一般的に震源パラメタ推定に用いられてきたグリッドサーチによる推定手法に代わり,マルコフ連鎖モンテカルロ法を使った推定手法を導入した推定を実施した. 2021年度は,前年度までに開発した震源パラメタ推定手法のさらなる高度化に取り組むと同時に,研究成果の論文化・投稿・再解析をおこなった.解析では理論スペクトルと観測スペクトルを比較し,確率の高い部分を重点的にサンプリングしながら,尤度の評価を通して震源パラメタを推定する.まず,シミュレーション波形を100個発生させ,手法や選択した確率密度関数の効果を検討し,確率密度関数として選んだF分布が適切であることを確認した.実波形として米国オクラホマ州で発生した誘発地震に対して本手法を適用したところ,シミュレーションよりもサンプリングのばらつきはあるものの,推定は良好に行われた.さらにサンプリング密度から尤度を計算することによって,確率分布を視覚化した.
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