研究課題
地球の大気海洋は、火山活動によって地球内部から放出された揮発性物質が蓄積して形成したと考えられている。火山活動は地球表層環境を支配しており、その物質循環に関する知見は、表層環境の変遷およびこれからの進化過程を推定する上で重要である。本研究では、トカラ列島周辺の火山活動について化学的な調査を実施することで、その規模や表層環境への影響を評価することを目的とする。2019年度はガス・水試料用のサンプラーの準備を進めるとともに、薩摩硫黄島における観測を実施して温泉水試料などを採取した。それらを精製し質量分析計を用いて測定することによって、ヘリウム・ネオンの同位体組成などを測定したところ、薩摩硫黄島の温泉水試料からマグマ起源と考えられるヘリウム同位体比異常が検出された。今後トカラ列島周辺に位置する他の火山熱水系のデータと比較することにより、トカラ列島周辺の火山活動・物質循環の規模を制約可能と期待される。また、他の火山地域との物質循環・活動規模の比較を目的として、木曽御嶽山における観測や箱根山火山活動の解析を実施した。木曽御嶽山では薩摩硫黄島と同様に、温泉水や遊離ガスを採取し、化学組成やヘリウムなどの希ガス・炭素・窒素等の同位体を分析することによって火山活動の評価を行った。また、箱根山の化学データを用いて噴火に関連する火山現象を解析し国際誌に報告するなど、火山活動の調査・解析における有用な知見を発信した。加えて、学術研究船新青丸を用いたKS-19-13, KS-19-14次研究航海に参加し、日本海溝近傍プチスポット火山周辺における流体循環を調査した。これら陸上・海底火山研究により得られた知見・技術は、今後トカラ列島周辺の火山活動に関する研究を推進する上で大いに役立つだろう。
2: おおむね順調に進展している
薩摩硫黄島の調査を実施し、トカラ列島周辺の火山活動・物質循環の規模に有用なデータを収集することに成功した。また、木曽御嶽山・箱根山・日本海溝近傍プチスポット火山など他の陸上・海底火山地域の観測研究を進めることにより、トカラ列島周辺の火山活動・物質循環を効率的に調査する上で有用な知見・技術を蓄積した。
当初の計画通りに今後の研究でトカラ列島周辺における観測点を増やし、当該地域の火山活動・物質循環を評価する上で有用なデータセットの収集を継続する。また他の陸上・海底火山地域の調査も進めることによって、トカラ列島周辺の火山活動・物質循環を効率的に調査する上で有用な知見・技術を蓄積し、本研究課題を効率的に進めていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件)
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