研究課題/領域番号 |
19K14813
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鹿児島 渉悟 富山大学, 学術研究部理学系, 特命助教 (70772284)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 火山活動 / 物質循環 / 地球化学 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
地球の大気海洋は、火山活動によって地球内部から放出された揮発性物質が蓄積して形成したと考えられている。火山活動は地球表層環境を支配しており、その物質循環に関する知見は、表層環境の変遷およびこれからの進化過程を推定する上で重要である。本研究では、トカラ列島周辺の火山活動等について化学的な調査を実施することで、その規模や表層環境への影響を評価することを目的とする。 2019年度に薩摩硫黄島で採取した試料の分析を継続し、炭素・窒素の同位体組成などを測定したところ、温泉水試料に含まれる炭素同位体比は、典型的な沈み込み帯における火山性流体の値を持つことが分かった。この結果は、2019年度に検出されたヘリウム同位体比異常とあわせて、薩摩硫黄島の温泉におけるマグマ・マントル起源物質の混入を示唆する。今後トカラ列島周辺に存在する他の火山熱水系のデータと比較することにより、当該地域の火山活動・物質循環の規模に制約を与えることを目指す。 他の火山地域との物質循環・活動規模の比較を目的として、富山県の立山などにおける観測を実施した。立山では遊離ガスや温泉水を採取し、化学組成やヘリウム・炭素・窒素等の同位体データを基にして火山活動の評価を行った。加えて白鳳丸KH-20-8次研究航海に参加し、2019年度から引き続き日本海溝近傍プチスポット火山周辺における流体循環を調査した。また、2019年度の新青丸航海で得られた当該地域のデータを基にプチスポット火山周辺の物質循環を解析して、研究成果を学会で発表した。これら陸上・海底火山研究により得られた知見・技術は、今後トカラ列島周辺の火山活動に関する研究を推進する上で役立つだろう。 研究代表者の所属変更に伴い、試料測定に利用してきた質量分析装置を東京大学から富山大学に移設し、研究室の環境を整備した。これにより、引き続き本研究課題を遂行することを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薩摩硫黄島の調査結果から、トカラ列島周辺の火山活動・物質循環の規模に有用なデータを収集することに成功した。また、立山や日本海溝近傍プチスポット火山など他の陸上・海底火山地域の観測研究を進めることにより、トカラ列島周辺の火山活動・物質循環を効率的に調査する上で有用な知見・技術を蓄積した。一方で、新型コロナ感染対策により野外調査が困難になるなど、研究活動が大きく制限された。加えて、研究代表者の所属変更を受けて、分析装置の移設などを実施して研究室環境を整備する必要に迫られたことも影響して、研究に遅れが生じた。ただし、これにより本研究課題を今後も継続して実施可能な環境を整備することができた。2021年度は2020年度に整備した研究室環境を利用して研究を進めることで、目的の達成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究でトカラ列島周辺における観測点を増やし、当該地域の火山活動・物質循環を評価する上で有用なデータセットの収集を継続する。また他の陸上・海底火山地域の調査も進めることによって、トカラ列島周辺の火山活動・物質循環を効率的に調査する上で有用な知見・技術を蓄積し、本研究課題を効率的に進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属変更に伴い、研究を継続するため分析装置を運搬する必要が生じた。当初計画されていなかった運搬作業にかかる費用を支出するために、前倒し支払請求を行った。前倒し支払請求後に、運搬費用の一部を他財源から支払うことが可能となったため、前倒し支払い請求額の全額を執行する必要がなくなった。そのため、今後円滑に研究を遂行するために予算の一部を次年度に繰り越すこととした。次年度使用額については、計画通り野外調査や実験、成果報告のために使用する。
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