地球の大気海洋は、火山活動によって地球内部から放出された揮発性物質が蓄積して形成したと考えられている。火山活動は地球表層環境を支配しており、その物質循環に関する知見は、表層環境の変遷およびこれからの進化過程を推定する上で重要である。本研究では、トカラ列島周辺の火山活動等について化学的な調査を実施することで、その規模や表層環境への影響を評価することを目的とする。 2021年2-3月に実施された白鳳丸KH-22-4次研究航海に参加し、鹿児島湾―トカラ列島周辺の海底熱水系における観測を通じて海水試料を採取した。年度内には間に合わなかったが、今後得られた試料の希ガス同位体等を測定し、本研究や先行研究においてこれまで得られたデータと比較することによって、鹿児島湾―トカラ列島域における火山活動の変動・規模や物質循環を制約する。 また、他の火山地域の物質循環・活動規模との比較を目的として、木曽御嶽山や弥陀ヶ原における観測を実施した。これらの地域で遊離ガスや温泉水を採取し、化学組成やヘリウム同位体データ等を基にして火山活動の評価を行った。加えて、2019―2020年度に参加した新青丸・白鳳丸航海で得られた、プチスポット火山周辺を含む日本海溝近傍海域のデータを基に物質循環を解析して、研究成果を国際誌や国際学会で発表した。これら陸上・海底火山研究により得られた知見は、トカラ列島周辺の火山活動の解析を行う上でも役立つだろう。
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