研究課題/領域番号 |
19K14817
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大田 隼一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70793579)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 遠洋性褐色粘土 / 年代測定 / 同位体比測定 / Lu-Hf法 |
研究実績の概要 |
本研究は、過去の地球環境の変化の記録を明らかにする鍵となる遠洋性褐色粘土の堆積年代を決定するために、遠洋性褐色粘土に含まれている魚骨片化石中に濃集しているルテチウム(Lu)同位体がハフニウム(Hf)同位体に放射壊変することを利用した年代決定法であるLu-Hf法を用いて、信頼性の高い堆積年代を得る手法を開発し実用化することを目的とする。令和1年度は、計画として①魚骨片化石に付着している、正確な年代地をかく乱してしまう物質を除去する手法の開発、②測定装置の高精度測定条件の決定、および、③年代値の正確性の検討を進めた。このうち①については、年代のかく乱要因となるマンガン酸化物が、還元剤を用いた洗浄により除去できることを確認した。②については最も時間を要し、年代値計算に必要なHf同位とLu同位体を測定するための装置設定を構築し、さらに正確な測定に必須となる補正方法も新規構築した。また、正確な測定値の算出のために用いる試薬および標準溶液を調整した。以上のように整備された測定環境のもとで、テストとして正確な同位体比の決まっているHfとLuの標準溶液を測定したところ、本研究で構築した測定手法により、正確かつ高精度なLu-Hf測定が可能となったことを確認した。これにより、実際の試料から年代値を得るための準備が整った。次に、③の年代地の正確性の検討のための試料の準備を行ったが、COVID-19の感染拡大を受けて実験作業等を継続することができなくなったため、③については令和2年度に行う。なお、本研究課題の第一年目である令和1年度に行った、これまでにない全く新しい同位体分析法の開発は、機器の調整や、多くの条件のすり合わせ、試薬と標準溶液の調整など、実際の分析の準備が主となるうえに、COVID-19の感染拡大により実験作業等を継続することができなくなったため、令和1年度の成果発表は行っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の令和1年度計画である、①魚骨片化石から正確な年代地をかく乱してしまう物質を除去する手法の開発、②測定装置の高精度測定条件の決定、および、③年代値の正確性の検討、について、①および②についてはほぼ計画通り達成したが、③についてはCOVID-19の感染拡大を受けて実験作業等を継続することができず完了できなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は実験室における作業や測定作業が必須となるが、COVID-19の感染拡大の収束の見通しが不明なため、本研究課題進展の正確な見通しも不明である。しかし、令和1年度に完了した一連の試料準備と測定環境整備により、令和2年度計画である③の年代地の正確性の検討、および④魚骨片化石回収率の最大化、の作業については実験再開が可能となった時点ですぐに開始することができる。実験開始後すぐに、年代のすでに分かっている試料の測定を行って年代値を算出し、本手法の正確性を確かめる。さらに、別の年代の堆積物試料の測定と並行して、令和1年度に整備した魚骨片分離手順の最適化を行い、効率よく正確な年代値の得られる手法を開発する。本研究の成果発表としては、現状では9月に行われる予定となっている地球化学会における発表をまず目標とし、さらに令和2年度後半には、本手法そのものに関する論文、および本手法により得られた遠洋性褐色粘土の新たな年代モデルに関する論文を出版することを目標とする。
|