研究課題/領域番号 |
19K14820
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松本 恵子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (10803926)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 噴火 / 酸化 / 桜島火山 / 浅間火山 / 新燃岳 / 鉄酸化鉱物 / 噴煙 |
研究実績の概要 |
噴出物の岩石組織は,マグマ組成が同じでも,マグマが火道上昇して地表にとどまる間の物理化学条件の変化により,多様になる.マグマはしばしば地表付近に停滞し,噴火様式を変えながら噴火を繰り返す.一連のメカニズムの把握には,岩石組織に基づくマグマの物理化学条件の推定が有効である.しかし,大気による酸化の影響は未解明である.本研究では,特に地表付近の低圧・高酸化環境下について,天然試料と実験産物を相互に比較しながら,主に鉄酸化鉱物の種類・微細組織・量などの岩石組織解析から,地表付近におけるマグマの物理化学条件を推定する. 本年度は,天然噴出物の試料採取および岩石組織解析を行い,成果を国際誌に掲載した.類似したマグマ組成である桜島および浅間の2火山について,爆発様式が異なると想定される計4つの噴火の噴出物の観察から,各噴出物に含まれる硫化鉱物のうち,大気による酸化で鉄酸化鉱物の仮像を生成した個数の割合を求めた.その結果,火山に依らず「定常状態の爆発的噴火」の方が,「突発的な爆発的噴火」よりも多いことを示した.この結果を説明する噴煙混合モデルと噴出物の高温持続モデルを提案し,「定常状態の爆発的噴火」の方が,大気豊富な酸化的環境での高温がより長時間持続したことを示した.また,新燃岳2018年火山灰の岩石組織解析を進めた.火山灰粒子には主に黒色,透明,赤色が存在し,色調の違いは石基微結晶の有無や種類によること,また各色調の粒子の構成割合は一連の噴火活動時期により増減することを明らかにした.さらに,地表付近の岩石組織を再現する加熱実験を開始した.2種類の安山岩質マグマの出発物質について,酸素雰囲気は大気圧またはNNO,1000℃,1気圧,15~60分の条件で加熱実験を行った.今後は天然試料と実験産物との比較を通して,地表でのマグマの物質科学的変化を解明する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度予定していた下記の計画は予定通り進んだ. (1)天然噴出物の試料採取および岩石組織解析を行い,硫化鉱物から鉄酸化物を生成する火山噴煙内のマグマ―大気相互作用プロセスについてまとめ,成果を国際誌に掲載した.また,新燃岳の2018年噴火噴出物の観察と岩石組織解析を進め,火山岩塊および火山灰粒子の色調とその要因について明らかにした.噴火メカニズムとの対応について考察し,結果は次年度投稿予定である. (2)2種類の安山岩質マグマの出発物質について,酸素雰囲気は大気圧またはNNO,1000℃,1気圧,15~60分の条件で加熱実験を行った.次年度以降は実験産物の岩石組織観察とラマン分光分析を行う.
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今後の研究の推進方策 |
天然噴出物の岩石組織解析については,複数の火山で様々な噴火形態の噴出物を扱ったことで,鉄酸化物等の鉱物種や鉱物組織,その晶出条件や成長条件の多様性と共通性が明らかになりつつある.今後は,個々の岩石組織の多様性を火山活動と対比しながら噴火メカニズムを解釈する.同時に,加熱酸化実験からどの岩石組織が高温酸化に由来するのか,またどのような条件で生成するのかを具体的に制約し,地表付近でマグマに生じる大気による物質科学変化を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
加熱実験に使用する金属チューブを購入する予定であったが,予備実験であったため在庫を使用した.予備実験により実験構成が決まったため,次年度以降実験材料の購入に充てる予定である.
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