研究課題/領域番号 |
19K14820
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松本 恵子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (10803926)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | その場観察 / 高温実験 / 酸化 / 爆発噴火 / マグマ |
研究実績の概要 |
火山噴火のメカニズムの解明のため,噴出物の岩石組織から火道上昇中や地表付近に滞留中のマグマの物理化学変化を推定する必要がある.マグマは地表に上昇すると温度・圧力の低下だけでなく大気との接触により急激な酸素分圧の上昇を被る.しかし,これまで酸素分圧の上昇で形成する岩石組織の報告例がほとんどなかった.本研究では,天然噴出物と実験産物の比較により,地表にあたる低圧・高酸化条件での岩石組織形成プロセスを推定した. 2021年度は東北大でその場FE-SEM加熱観察を行った.直径30μmに粉砕した新燃岳2018年噴出物の輝石結晶を出発物質とし,32Pa,乾燥大気(酸素20%)条件で950℃まで10℃/秒で加熱し,950℃で保持した出発物質をその場観察した.950℃到達後33分で輝石結晶破断面の伸長方向外側に,BSE像で輝度の高い約300~500nmの正八面体状鉱物の晶出,約1時間で結晶破断面状にサメ肌状に直径数十~数百nmの微粒子の晶出と磁鉄鉱インクルージョンへのラメラ晶出,約1時間50分後には輝石伸長方向外側に長さ500nmの長柱状鉱物晶出を確認した.加熱実験終了後に晶出鉱物をEDS分析した結果,正八面体状鉱物からFe,O,長柱状鉱物からFe,Si,Oが検出され,高温・高酸化雰囲気において輝石結晶に2種類の鉱物が生成したことを確認した.一方,新燃岳の火口近傍調査により,赤色火山灰脈をもつ2018年噴火噴出物を採取した.試料の顕微鏡観察により,輝石やかんらん石などの苦鉄質鉱物表面に1μm未満の赤色微粒子が多数付着していることを確認した.観測による2018年噴火推移から,溶岩噴出後数日から2週間程度の間で赤色火山灰が形成されたと見積もった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北大でのその場加熱観察実験により,温度・酸素分圧を固定した条件下での酸化生成鉱物の種類と形成時間をおおむね制約できた.鉱物種の同定や形成時間の定量的制約には系統的な実験を行う必要がある.一方で,火口近傍の地質調査からは天然試料の観察から噴火状況を加味して形成時間の制約を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
酸化により噴出物が赤色化すること,赤色化した試料には石基の鉱物やメルトに直径1~2μmの微粒子が存在すること,新燃岳の火口近傍噴出物にそれらがみられることについての研究成果をまとめ,国際学会で発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により国際学会(IAVCEI)とフィレンツェ大学打ち合わせが延期されたこと,また試料採取地を移動可能な国内の火山に変更したため計画の延期と繰り越しを行った.IAVCEIについては今年度渡航可能であれば旅費および学会参加費に使用する.フィレンツェ大学打ち合わせについてはオンラインミーティングに変更する.残りは成果発表のオープンアクセス費に使用する.
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