研究課題/領域番号 |
19K14824
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
岡本 尚也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD) (80756130)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低重力 / 高速衝突実験 |
研究実績の概要 |
本年度は模擬低重力下での高速衝突実験を行うため, 宇宙航空研究開発機構(JAXA)施設内にある縦型二段式軽ガス銃の真空チャンバー内に簡易な落下塔の開発を行った.落下装置にはボールベアリングとレールを使用し, 落下装置上部に電磁石で固定した標的容器が鉛直方向に滑らかに落下するよう設計した.またパルスジェネレーターとオシロスコープを用いてトリガー系統を整備し, 標的落下中に弾丸が衝突するように弾丸発射装置への信号入力の調整を行った.容器に固定した加速度計によって標的容器の落下加速度を計測したところ, 直径30 cm,高さ10 cmのステンレス容器に約12 kgの硅砂(粒径~425 μm)を充填し真空下(~100 Pa)で落下させた場合, 0.06 ~ 0.07 Gの範囲の模擬重力を得ることがわかった. 開発した落下装置を用いたテストショットとして, 直径4.8 mmのポリカーボネイト球弾丸を速度1.2 km/sで約100 Pa下で高速衝突実験を行い, ハイスピードカメラによりクレーター形成過程の観察を行った.容器の落下開始から低重力状態が安定するまでに,0.4 s程度かかることがわかった.低重力状態が安定してから容器が落下し終わるまでの時間は約0.3 sであり,弾丸が衝突した際の衝撃を示す波形も観察できた.また,1 G下で行った実験結果と比較すると低重力下の実験結果の方がクレーター形成時間はより長く,クレーター直径も大きくなっていることがわかり, 本装置を用いて1G下と低重力下で異なる結果を得ることができた.低重力下での結果を最終クレーター直径の下限値とすると,先行研究で得られたスケーリング則と一致することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は落下塔の開発を行うことを予定していたが, 実際に落下塔を製作しこれを用いた実験を行って初期データを得た.開発した装置を用いてクレーター成長中の模擬重力のデータやクレーター成長過程の画像が取得が可能となった. 1G下での実験と本装置を用いた模擬低重力下での実験で結果に違いのあるデータの取得を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発した落下塔を用いることで, 高速度域での低重力下での衝突実験が可能となった.1G下と低重力下で異なる結果を得ることができた一方で, 標的容器が落下するまでにクレーター形成が終わっていない可能性が示された.よって今後は,落下中に成長を終えたクレーター直径が計測できるよう, クレーター形成時間に対して低重力継続時間を長くした条件で実験を行うと伴に, 容器の落下時間をより長く確保できるよう装置の改善を行う.また標的から放出されるイジェクタを観測するための観測システムの開発を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で開発する組み立て式落下塔は, 高速衝突実験で使用できるよう宇宙航空研究開発機構にある2段式軽ガス銃用チャンバー内で開発している。この2段式軽ガス銃は共同利用されており, 多くのユーザーに使用されている。そのため多くのユーザーにとって汎用性のある実験装置や消耗品だと銃の管理者が判断した場合, それを銃管理者が所持する予算で購入していただけることがある。今回, 落下塔に使用する重量用レールの一部やトリガー入力に必要な機器などがそれに該当し購入していただけることになったため,本研究費で残額が発生し次年度へ繰り越すこととなった。次年度はこの繰越金と翌年度分の助成金を用いて, 落下塔の改良,クレーター内部から放出されるイジェクタを観察するための観測システムの開発, 粒径の異なる標的物質の準備, データストレージの確保, 並びに国内・国外学会参加費に使用する予定である。
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