研究課題/領域番号 |
19K14824
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
岡本 尚也 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 研究員 (80756130)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小天体 / 低重力 / クレーター形成 / 衝突実験 |
研究実績の概要 |
小天体表面での衝突現象を理解することは,小天体の表層物性や地質年代,表面進化の過程を読み解くことにつながる. これまで我々は宇宙航空研究開発機構(JAXA)施設内にある縦型二段式軽ガス銃の真空チャンバー内に簡易な落下装置を構築し,高速度域(~1.2 km/s)での低重力下でのクレーター形成実験を可能にした.この装置を用いて,異なる物性を持つ粉体試料に対して1 Gおよび模擬低重力下での衝突実験を行い,粉体標的の内部摩擦角・空隙率および固着力がクレーター直径に与える影響,ならびに重力支配域と強度支配域の境界条件を粒子層の固着力(もしくは実効強度)と重力項の比を用いて表した.以上の内容を論文にまとめ海外雑誌に投稿した. 以上より,クレーター直径に関するデータについて整理を行うことができたが,低重力下でのクレーター形成をより理解するためには,クレーターの深さ方向やクレーター内部の粒子の流れを観察する必要がある. 本年は,これまでに構築した低重力模擬落下装置に,クォータースペース法を用いた「断面的な観察」を行う計測システムの開発を行った.ステンレス製の標的容器の内部にアクリル板を用いて鉛直方向に空間を仕切り,一方の空間に標的粒子を充填し,もう一方にデジタルカメラと光源を設置することで,模擬重力0.04±0.03 G, 低重力継続時間約0.4 sの条件で,高速衝突によるクレーター断面の成長過程の観察を行えるようになった.弾丸はポリカーボネート(直径4.8 mm,高さ5 mm)を用い,硅砂(粒径~450 μm)および微小アルミナ粒子(粒径~40 μm)に速度1.2 km/sで衝突させその場観察を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年前半は, 論文作成に必要なデータ数を増やすことにしたため, クオータスペース法を用いた低重力下での計測システムの開発着手に遅れが生じた. また,開発した計測システムでテスト実験を行ったところ,1 G下でも低重力下でもクレーター成長の観察を行うことはできたが, 低重力下での撮像画像において,クレーター壁とクレータキャビティの境界が明瞭に撮像できておらず,定量的な解析を正しく行うにはコンフィグレーションを改良する必要が生じたため.
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今後の研究の推進方策 |
本年の計測システムの開発により,1 G下,0.04 G下ともにクレーターキャビティの成長過程が良く観察できることがわかったが,成長するクレータ壁をより鮮明に撮影し,正しく解析するためには,カメラの画角や照明の調整,粒子の流れを可視化するための工夫(例えば色を付けた試料を用いる)等,改良すべき点がある.今後はこれらの改良を行うことで,低重力下でのクレーターキャビティの詳細な成長過程や掘削粒子の挙動に関するデータ取得を目指す.また,実際の天体表層粒子を模擬したシミュラントを標的に用いた実験を行うことを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,2020年度, 2021年度に実施を予定していた実験施設の利用が困難になり,実験が計画通りに進まず予定が大幅に遅れたため.また,本年は論文執筆に時間を要し,計測システムの開発の着手に遅れたため. 次年度は,成長するクレータ壁をより鮮明に撮影し正しく解析を行うための計測システムの改良費,ならびに数値シミュレーションとの比較のための計算機の購入を予定している. また,落下の衝撃によりデジタルカメラがへたり,おかしな画像が撮像されることがある.そのため,消耗品としてデジタルカメラを数台購入する.また,実際の天体表層粒子を模擬したシミュラントの購入を検討している.
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