研究課題/領域番号 |
19K14825
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
吉田 健太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 研究員 (80759910)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 集束イオンビーム / 電子顕微鏡 / 三次元組織観察 / 変成岩 / 組成累帯構造 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では,集束イオンビームを用いて岩石の微細組織を三次元的に観察するための基礎データ蓄積を中心に行った.変成岩に含まれる鉱物が持つ複雑な組成累帯構造と,岩石中の組織(例えば微小なクラックなど)の関係性を記述するうえで,従来の薄片表面のみでの観察では不十分な場合があることが,近年の研究でわかりつつある.しかしながら,電子顕微鏡の組成分解能と空間分解能はトレードオフの関係性があり,三次元微細組織観察でもこの点を踏まえた分析条件の確立が重要な課題である. 本年度は,単純な構造を持っている花崗岩の組織観察と,複雑な構造を持っている変成岩の組織観察を実施し,それらの条件比較から最適な条件を策定した.JAMSTECが保有する最新の集束イオンビーム装置を用いて,適切な分析条件を設定することで,サブミクロンスケールの微小クラックや空隙の分布を3次元的に追跡することが可能であることがわかった.これらの情報を従来の岩石学的な研究に取り入れることで,温度圧力解析に流体活動の解析を融合させた記載岩石学を実施することが出来る.花崗岩の分析結果は特に微小クラックの分布に着目する形でWatanabe et al. (2019 EPS) で論文として公表された.また,変成岩の分析結果については,現在論文の作成中であり,2020年度前期内には投稿予定である. 電子顕微鏡を用いて取得した三次元データの処理についても,自動化と手作業のバランスを考えつつ,広く使いやすいデータ処理の枠組みの検討を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集束イオンビームを用いて,化学組成も含めた3次元組織観察を行うことが,本研究の最大のポイントである.本年度は,集束イオンビーム装置が不調で,思うように分析時間を確保できない時期もあった.また,変成岩のデータを用いた論文を作成・投稿したものの,一度は棄却を受けた.現在修正を行い,再度の投稿を目指して調整を行っている. 総合的に見ると,一定量の良質なデータを取得することは出来たことと,棄却はされたものの論文化へのデータ処理と解釈を進めることが出来たため,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は当初より新型コロナウィルス感染症COVID-19に関連して研究活動にも大きな影響が出ている.本研究は,電子顕微鏡を用いたデータ取得と,コンピュータ上でのデータ処理の二本柱で構築する研究であるが,2020年4月現在研究施設は実質的な閉鎖状態にあり,分析装置を用いての新規データ取得は不可能な状態である.まずは現在取得済みのデータを用いた論文投稿の準備を進め,閉鎖が解除され次第新規のデータ取得と,それを活用したデータ処理プラットフォームの構築を行う. 2020年度中には分析の枠組みを確たるものとし,天然試料への適用例を増やしていきたい.一方で,野外調査での試料採取も行いたいところではあるが,世界情勢を踏まえると調査に関しては見通しが立たない.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は研究計画は総合的にはおおむね順調に進んだが,一部実験が予定通り出来なかった期間があったことと,投稿した論文が棄却されたことが,研究の進展のマイナス面であった.特に,論文が棄却されたことにより,論文投稿関連費用として確保していた一部金額を次年度に繰り越すこととなった.また,予定していた海外出張に関して,他の経費から支出したため旅費にも次年度使用が生じた.次年度使用額は論文投稿準備費等に充てる.
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