研究課題/領域番号 |
19K14825
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
吉田 健太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 研究員 (80759910)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 集束イオンビーム / 先三波川変成作用 / 超臨界流体 / 福徳岡ノ場 / ナノライト |
研究実績の概要 |
2021年度は継続するコロナ禍のために海外渡航や諸出張に制限が続き,思うように実験を実施できない場面も多くあった.それを踏まえて,本研究課題では,岩石の微小組織を三次元的に観察し,岩石形成プロセスを論じるべく,種々の岩石に対して詳細な組織観察を実施した結果,いくつかの重要な成果を挙げることが出来た.
西南日本に産する三波川変成帯は従来白亜紀(約1億~8500万年前)の変成作用を被った岩石だと考えられてきたが,四国に産する炭酸塩岩の一部に,それより遥かに古い約2億年前の変成作用が記録されていることが明らかになった.チタン石の微細組織観察により,岩石は2億年前の変成作用と1.2億年前の初期三波川変成作用を記録しており,チタン石を使った温度・圧力推定から,2億年前の変成作用は1000度,2.5GPaという従来当該地域で認定されていたものとは全く異なる変成作用であることがわかった(Yoshida et al., 2021 Lithos).新しく見つかった「先三波川変成作用」は,西南日本形成史を議論する上で重要なものと考えられ,今後その広がりを今後検証していく必要がある. 集束イオンビームを用いた岩石試料の微小領域切り出しを生かし,高エネルギー加速器研究機構の放射線XAFS-CTを用いることで,岩石中の微小包有物の内部組織を可視化することに成功した.結果,流体から沈積した自形結晶の存在を明らかにし,先三波川変成作用下での超臨界流体の存在を明らかにした. 2021年8月に噴火した福徳岡ノ場から放出された軽石が秋以降日本列島に漂着し話題となったが,この軽石の微細組織観察を実施し,軽石のガラス中に極微小の磁鉄鉱粒子(ナノライト)を見出し,爆発的な噴火への関与を提案した(Yoshida et al., 2022 IAR).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はウィズコロナとデルタ株・オミクロン株との攻防バランスにより,時期によって出張の制限があった.その為,外部機関の装置を活用した研究や,外部研究者との共同研究に関して特に困難が大きく,一部実験施設利用期間を諦めざるを得ない場面もあった.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は本来の予定期間から1年延長をして,これまでに取得済みのデータの整理と論文化を進めつつ,一部追加の実験も行う予定である. 取得済みのデータについては,概ね論文化の見通しが立っており,本年度の研究を推進する上で障害は少ない.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にあって海外渡航制限,および国内の感染拡大状況に応じた出張制限があり,予定していた実験や学会での出張が出来ないことが多かった.また,それに伴い実験のための物品費も必要額が減り,結果として次年度使用額が生じることとなった. 次年度使用額は追加実験用の消耗品および成果発表のための学会参加費・論文投稿費用に当てる.
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