研究課題
2022年度は継続するコロナ禍のために,主として海外渡航への制限が続いており,研究成果の発表および議論の場を設ける上で障害があった.本研究課題では,岩石の微小組織の三次元的観察・高分解能観察を行い,岩石形成プロセスと地質現象への理解を深めるための種々の研究を実施し,主に国内開催の学会での発表を行うと共に,国際学会にあってはオンライン参加を活用することで研究成果の公表を進めた.21年度からの継続的な研究成果として,先三波川変成作用下での流体活動の詳細を三次元的な組織観察から進めた.2億年前の形成年代を持つチタン石に含まれる流体包有物から,水流体と共存する石英の自形結晶を認定し,放射線XAFS-CTによる分析試料数を増やすことで,先三波川変成作用下(約1000度・2.5GPa)で水流体が多量のSiO2成分を溶かし込んでいたという情報の精緻化と,国際学会での発表を行った(Yoshida et al., 2022 国際エクロジャイト会議).また,2021年8月に噴火した福徳岡ノ場から放出され,日本列島各地に漂着した軽石に関しても,電子顕微鏡および関連技術を用いて研究を進めた.タイに漂着した軽石を,現地機関と連携して採取・分析を実施することで,2021年噴火の軽石が南シナ海を越えて合計で5000km近く漂流・拡散していたことを明らかにした(Yoshida et al., 2022 Geochem. J.).加えて,軽石のガラス中に含まれる磁鉄鉱の極微小粒子(ナノライト)を,京都大学との共同研究により透過電子顕微鏡観察,高エネルギー加速器研究機構の放射光XANESを利用した鉄の二価・三価分析により詳細に調べることで,福徳岡ノ場の噴火がマグマ溜まりへの水供給とそれによるマグマの酸化によって引き起こされていたという新しい噴火モデルを提案し,論文として投稿した(23年度受理公表見込).
3: やや遅れている
コロナ禍の対応は2022年度は全体的に緩和されたものの,引き続き調査の準備コスト増大(主に手続きの時間的負担)などが見られ,研究進行のうえで障害となった点は否めない.
本研究課題もコロナ禍に対応しながらデータの蓄積が進み,取得したデータも徐々に公表出来つつあると言える.2023年度は,投稿の最終工程にある論文作業を既に実施しているなど,本課題の成果を公表する作業を重点的に行う.
コロナ禍にあって海外渡航制限,および国内の感染拡大状況に応じた出張制限があり,予定していた実験や学会での出張が出来ないことが多かった.また,それに伴い実験のための物品費も必要額が減り,結果として次年度使用額が生じることとなった.次年度使用額は追加実験用の消耗品および成果発表のための学会参加費・論文投稿費用に当てる.
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Journal of Volcanology and Geothermal Research
巻: 434 ページ: -
10.1016/j.jvolgeores.2022.107738
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
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10.2465/jmps.210814
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Japanese Magazine of Mineralogical and Petrological Sciences
巻: 51 ページ: -
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https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20221014/
https://metamorphicfl.jimdo.com