研究課題/領域番号 |
19K14826
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
細野 七月 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(数理科学・先端技術研究開発センター), 特任技術研究員 (70736298)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 月形成 / 巨大衝突 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、月形成シナリオとして最も有力な仮説である巨大衝突説において、地球のマグマオーシャンがどの程度その数値計算結果に影響を与えるかに関して、最新の計算機技術を用いて幅広く調べることである。
数値計算でもって月形成の巨大衝突を行う際に重要なのは、扱いたい物質に対して適切な状態方程式を選択する事である。これまで地球の固体マントルに対してはTillotson状態方程式と呼ばれる状態方程式かまたはANEOSと呼ばれる状態方程式のどちらかが用いられてきた。一般的にはANEOSの方がより正確な状態方程式であるとされているが、ANEOSは元々軍事研究から開発された状態方程式であるため、極めて複雑かつ使用が困難であり、本質的な物理の解明を隠蔽してしまう可能性もある。また、マグマオーシャンの様な液体岩石の状態方程式に関しては、これまで数値計算は行われてきていなかった。そこで、分子動力学などでよく用いられているHard sphereモデルを用いた物を使用する事にした。
本年度では、これらの状態方程式のうち、まずはANEOSを用いた巨大衝突の数値計算を行えるようにするためのコードの開発を進めた。ただし、前述した通りANEOSは極めて複雑なため、本質的な物理を見るために、簡略化したANEOSを開発しそれを用いる事にした。また、巨大衝突が起こると、その衝突のエネルギーにより衝突前は固体だった岩石も衝突後は液体になることもありうる。そこで、ANEOSとHard sphereモデルをつなげる様な定式化に関しても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の遂行に関しては、大規模な数値計算が可能な環境が必須である。したがって、今年度では最新の数値計算技術を用いたコンピュータを導入する事で巨大衝突の数値計算を行う予定であった。具体的には、近年広く用いられている加速器と呼ばれる装置を用いる事にした。加速器にはいくつか種類があるが、今回は2021年にアメリカのオークリッジ国立研究所に導入される予定のスーパーコンピュータに倣い、AMD社のCPUと加速器(GPU)を搭載したワークステーションを購入する事にした。しかしながら、当該年度時点ではこのAMD社のCPU及びGPUは生産数が限られており、購入予定であったワークステーションが入手が出来なかった。故に、このシステム向けのコードの開発が行えていない。
ただし、数値計算技術とはまた別に、ANEOSの導入に関してはある程度見通しが立った。したがって、全体の進捗度としては「やや遅れている。」程度であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は実施出来なかった大規模な数値計算が可能な環境の構築を行うと共に、コードの開発を行う。また、これとANEOSを用いた巨大衝突のテスト計算、ANEOSとHard sphereモデルを合わせた状態方程式の開発などを進め、巨大衝突におけるマグマオーシャンの役割に関してより正確に検証を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に購入予定だったワークステーションの一般流通が遅れ、入手が出来なかったが、次年度に購入予定である。
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