研究課題
惑星科学及び地球科学における重要な現象として、巨大衝突と呼ばれる物がある。この現象は、もともと地球の月の起源として提唱された物である。巨大衝突説によると、46億年前に原始の地球に火星サイズの天体が衝突する。これにより、衝突した天体は蒸発し、地球の周りに円盤を作る事になる。この円盤はやがて冷え固まり地球の月となる。この現象はこれまで数値計算で確かめられてきた。一方、2000年代に行われた月の石の高精度同位体比分析により、地球と月はほぼ同一の物質で構成されている事がわかった。即ち、巨大衝突の際に蒸発するのは、衝突した天体の側ではなく、原始地球の側である必要がある。これは、これまでの数値計算と矛盾する大きな問題とされた。近年、我々はこの巨大衝突の際に、原始地球にマグマオーシャン(MO)と呼ばれる液体岩石の海が存在すると、この問題が解決される可能性を示唆した。本研究の目的は、このMO仮説の詳細な数値計算を行い、実際にMO仮説がこの矛盾を解決するかを確かめる事である。最終年度では、実際にMOを持った天体への衝突現象を幾つかの状態方程式に関して行い、MO仮説がこの矛盾を解決可能である可能性が高い事を発見した。本研究の成果は、既に査読付き欧文雑誌に投稿・受理されている。本研究全体を通して、我々はMOを表現するために適切な状態方程式の議論及び導出、また実際にそれを用いた数値計算の実施などを行い、MO仮説が地球の月の起源として適切である可能性を十分に示唆できたといえる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Journal of Geophysical Research: Planets
巻: 127 ページ: e2021JE006971
10.1029/2021JE006971