研究実績の概要 |
真核生物とされる最古の化石は, アフリカ・ガボン南東部の前期原生代(約22億年前) の地層から発見されている. 本研究は, 同地域 (フランスヴィル地域, ラストゥールヴィル地域, オコンジャ地域) に産する化石 (複数種) が真核生物であるか検証すること, 各化石の分布および初出層準を特定すること, 同位体層序を用いて当時の地球化学的環境変動を調べることにより, 真核生物の進化に必要な条件の解明を目指している. 2019年度には, ガボンで地質調査を行い, 新たな陸上掘削コアの記載および試料採取を行った. 岩石試料を日本へ運搬し, 岩石薄片の作成・観察を行い, 化学分析に適した試料の選定を行った. 炭素・窒素同位体分析を行い, 既存の同位体分析データと合わせることにより, 連続的な層序を得た. その結果, オコンジャ地域のFD層について世界初の連続的な有機炭素・窒素同位体層序を確立した. さらに, ラストゥールヴィル地域のFB層中部において無機炭素同位体比の負シフトを特定した. 従来の最古真核生物とされる化石の産出 (フランスヴィル地域FB層最上部) よりも, 明らかに下位 (ラストゥールヴィル地域FB層中部) において, それまで安定していた炭素循環に変化があったことが示された. また, 黄鉄鉱主体の化石および珪酸-炭酸塩質の化石について, 予察的な内部構造観察およびデータ解析を行った. これまでに得られた成果を, 学会 (日本地球惑星科学連合大会, 日本地質学会) において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画において必要不可欠な岩石試料は概ね採取することができた. とくに, フランスヴィル地域およびラストゥールヴィル地域における同位体層序の検討および地域間対比は, 当初の予定以上の成果が得られた. 真核生物出現直前の環境変動として, 炭素循環の大きな変化を特定できたことは, 本研究の重要な成果の一つと言える. 一方, オコンジャ地域に関しては, FD層の層序は確立したものの, FB層の試料採取が依然として困難な状況にある. 次年度以降に, 現地共同研究者の助力を仰いで解決していきたい. また, 化石そのものの真核生物起源の検証については, すでに3次元内部構造観察および局所分析に着手している. 鍵となる保存状態の良い有機炭素の発見を目指し, 引き続き化石試料の精査を行っていく.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り, 有機物の残存が期待される珪酸-炭酸塩質の化石について, 局所分析を行い, 真核生物起源の脂肪族炭化水素の検出を目指す. また, より詳細な地域間層序対比を行うために, 再度ガボンにおける地質調査・試料採取を行う予定である. その結果に基づき, 各地域における化石の時間・空間分布を明らかにする.
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