現生動物では角やとさか等の構造とその有無に性差が見られることが多い。性差は主に性選択により顕著となり、種分化・形態的多様性に深く関連していると考えられる。化石動物の中にも現生動物のような装飾構造を持つものが多く存在していたことが化石記録から知られているが、これらの構造に性差が見出されることは極めて稀である。これは、手法的な問題が影響していると考えられる。そこで本研究では、骨組織学的な検討に基づく年齢推定、及び成長段階推定を通して、化石種における性的二型評価手法の検討を行う。化石種の中でも本研究では特に、角竜類恐竜を対象として性差・性別判定を行う。角竜類は,進化に伴って頭部後方にフリルを発達させた分類群で,そのフリル装飾の詳細な進化過程が研究されているグループである。また、角 竜類のフリルは性的ディスプレイとして性選択によって進化したと考えられていたが、最近ではフリルに性差が見られないことから、性選択以外のプロセスによってフリルが進化したとの仮説も提唱されており、性差の検討が大きく注目される化石分類群でもある. 今年度は、1)プロトケラトプスの四肢骨標本追加標本での薄片作成、観察、2)プロトケラトプスのフリルのCT撮影画像による内部構造の観察を行った。1)に関しては、前年度に行った予察的な観察とあわせて、複数個体のプロトケラトプスの成長曲線復元を行うとともに、四肢骨間の骨組織的な特徴の比較も行った。また、2)に関しては、自身の研究から明らかとなったプロトケラトプスのフリルに見られる装飾に関して、骨組織学的な観点から観察を行い、今後性差を見出すために利用可能かどうかの検討を行った。
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