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2021 年度 実施状況報告書

酸素オーバーシュート仮説の検証

研究課題

研究課題/領域番号 19K14832
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

後藤 孝介  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30612171)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードモリブデン同位体 / 酸化的風化 / 酸素オーバーシュート / ヒューロニアン累層群 / 原生代前期
研究実績の概要

原生代前期における大気酸素オーバーシュート仮説を検証するために、本年度はオーバーシュート前後に堆積したと考えられる堆積岩を対象に、Mo同位体分析を行い、大気および海洋の酸化還元環境復元を制約した。
まず、大気の酸化還元環境を明らかにするために、約23.5億年前に浅海域で堆積したカナダ・ヒューロニアン累層群のサーペント層・エスパニョーラ層より採取された砂岩・泥岩を対象に、系統的なMo同位体分析を行った。2019年度に行ったエスパニョーラ層のデータも含めると、平均値としてd98/95Mo = 0.15 ± 0.24‰が得られた。得られた値は、近年、氷河性ダイアミクタイトの分析により制約された太古代の上部大陸地殻のMo同位体比(d98/95Mo = 0.03 ± 0.18‰)と概ね一致する (Greaney et al., 2020 EPSL)。この結果は、オーバーシュート前のサーペント層・エスパニョーラ層が堆積した時期は、大陸地殻の酸化的風化が十分に作用しておらず、大気酸素濃度が低かったことを支持する。
一方、海洋の酸化還元環境を明らかにするために、約20億年前に堆積したインド・バスタークラトンの縞状鉄鉱層を対象に、Mo同位体分析を行った。縞状鉄鉱層のMo同位体比は、-0.3から1.2‰と大きくバラつくが、Fe/Mn比と正の相関を示した。これらの特徴は、還元的な海洋が拡大した時期に堆積した、18から19億年の縞状鉄鉱層のMo同位体比とも一致している(Planavsky et al., 2014 Nature Geoscience)。バスタークラトンの縞状鉄鉱層が堆積した時期には、還元的な海洋環境が拡大していた可能性が考えられる。
本年度、得られた結果を総合すると、大気酸素オーバーシュートが起きたと考えられている22から20億年前の前後では、大気と海洋ともに還元的な環境が広がっていた可能性が分かってきた。この見解は、近年、23億年前の堆積岩より報告された質量に依存しない硫黄の同位体効果(MF-S)とも調和的である (Poulton et al., 2021 Nature)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

落雷に伴い、使用する予定であったMC-ICP-MSの電源コントロールユニットが故障した。ユニットを交換する必要があったが、コロナ禍でパーツの供給が停滞し、ユニットの交換までに半年近く要した。その期間は測定が出来なかったため、予定より遅れた。

今後の研究の推進方策

今後は、約22億年前に堆積したガーナ・ビリミアン累層群の堆積岩を含むコア試料を対象としたMo同位体分析を進め、オーバーシュートが起きたと考えられている時期の酸化的風化の情報を取得する。

次年度使用額が生じた理由

測定装置が故障し、その期間の実験が停止したため、次年度使用額が生じた。繰り越した予算は、測定時の消耗品(コーン、トーチ、試薬)の購入に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件)

  • [国際共同研究] Dharanidhar Autonomous College(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      Dharanidhar Autonomous College

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公開日: 2022-12-28  

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