研究課題
若手研究
原生代前期における大気進化を理解するために、カナダ・ヒューロニアン累層群サーペント層のモリブデン同位体分析を行った。サーペント層のモリブデン同位体比は、-0.06から0.32‰の値を示し、太古代や原生代前期の氷河性ダイアミクタイトから制約されている上部大陸地殻の値(0.03 ± 0.18‰)と概ね一致した。このことは、サーペント層が堆積する際に、酸化的風化が起きていなかったことと解釈することが可能であり、少なくとも23.5億年前までは、大気酸素濃度が低いレベルで推移していたこと示唆する。
古環境学
地球大気の化学組成が地球史を通じてどのように変化してきたのかは、生命の進化と密接に関係している。本研究により、23.5億年前の堆積物の化学分析に基づき、この時代の大気酸素濃度が低かった可能性が明らかとなった。得られた知見は、原生代前期におきた大気酸素濃度上昇イベント(大酸化イベント)と酸素発生型光合成生物や真核生物の進化・出現の関係を理解する一助になると考えられる。